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天啓
「毎度、毎度、同じ作戦で上手くいくもんかね」
「さあな」
「偶には剣でばっさばっさ切っていきたいもんだ」
「私は銃の方が楽しい。快感」
「カフスは剣の良さを分かっちゃいない。肉を切る感触は楽しいんだ。人を殺している感覚が伝わってきて」
「私は遠くから死体になるのを見ているのが好き」
銃弾が戦場を駆け巡る。
「そういえばさ、アレだけど、天啓と呼ぶんだとさ」
「大層な名前。でも、死にたがりにはいいかもしれない」
「雑兵は消耗品だな」
「人の作った天啓に導かれる、か」
「それが幸せならいいのかもな」
頭部を失った死体が彷徨っている。戦場は呻き声で埋め尽くされている。
「弾が尽きた。くれ」
「撃ちすぎだって」
カフスは銃に弾を込めた。
「残りの弾は?」
「まだまだあるぜ」
「わかった」
鮮血が宙を漂う。敵も味方もなく人は倒れていく。
「遅いな」
「もうすぐだろうよ」
空に浮かぶ天啓の前兆。曇天には似合わぬ光弾が空を飛び行く。
「合図だ」
「わかった」
二人は撤退を始める。
「神の御加護があらんことを」
手で空を切り、彼らは立ち去った。戦場の中心には死人が一人立っていた。