表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦場の天啓  作者: 伊和春賀
12/12

平穏

「知ってるか。収容所がさ」

「ああ、跡形もなくなっていたって話だろ?」

 街の兵士は世間話をする。西にあるこの首都は、まだ戦禍とは無縁だった。

「怖いな」

「こういう時、門番でよかったと思うぜ」

「こら。前線で戦う兵に失礼だろう」

 城門を尋ねる人はいなかった。兵士は暇そうにあくびをする。

「でもさ、敵をほぼ壊滅できたってさ」

「勝利は目前ってことか」

「そうだな」

 兵士は空を仰ぎ見る。

「平和だな」

「ここはな」

 その時遠くに人の影が見えた。

「おや、人だ」

「商人たちか?」

「いや、一人だ。旅人かもしれんな」

「俺も旅をしたいもんだよ」

 髪の短い女が城門へ到着した。

「どちらから?」

「東の方からです」

「大変だったでしょう」

「まさか、戦争になっているなんて知らなくて」

 門番の兵士と女はしばらく世間話をした。その間にもう一人の兵士が女の手荷物を検査していた。

「ん? これは?」

 兵士は女の手荷物から拳銃を取り出した。

「それは自衛の為です」

「弾が入ってますね」

 兵士は女を訝しげに見た。

「あら? 問題でしたか?」

「ええ、弾は抜いてください。やりましょうか」

「いいえ、私がやります」

 女は兵士から拳銃を受け取った。女はそれを自らのこめかみに当てた。

「何を――?」

「天啓は我らを導く。貴様らに平穏はない」

 女は空を見上げた。

「神の御加護があらんことを」

 更なる戦争の引き金は引かれた。


よろしかったら感想をお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ