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戦場の天啓  作者: 伊和春賀
10/12

尋問

「なるほど。我慢強いですねえ。でも、あなたが情報を吐くまでやめませんよ」

 部屋の中は恐ろしく静かだった。

「強情ですねえ。私もさっさとあの女を拷問したいんですがねえ」

 床には剥がれた爪が数枚転がっていた。

「なら、さっさと殺せばいい」

「それだと困るんですよ。君達の兵器について聞かなくちゃあいけないからね」

「それしか言えないのか? この国の人間はよぉ」

 ジェイルがそれを言い終わるや否や、彼の顔面に拳がのめり込んだ。ジェイルは口から血を流している。

「短気なもんだぜ。俺は、カフスと会えれば何でも話すと言っているんだぜ」

「あの女ですか。あれは恋人なんですか?」

「さっさと会わせろ」

「それに、あなたは立場を分かっているんですかね。あの女に会わせるわけがないでしょう」

「もう殺したから、会わせられないってか」

「いえいえ。私の部下が楽しませてもらってますよ」

 男はジェイルの傷口にナイフを刺した。

「さっさと話せば、お望み通り殺してあげますよ」

「くっ。じゃあ、こうしようじゃないか。あんたらが知りたいのはあの兵器についてだろう?」

「そうですよ。さっさと話しなさいな」

「なら約束しろ。話せば、カフスに会わせると。一目でも会えれば、俺を殺されてもいい」

「いいですよ。約束しましょう。私もこんな尋問には飽きていたところですから」

 男はジェイルが縛り付けられている椅子の前に立った。

「あの兵器を俺らは天啓と呼んでいる」

「天啓。大層な名前を付けたものだ」

「そして、あの兵器の動力源は人間だ」

「そんなことは知っている」

「なら、あの兵器が人間の生命力を動力源としていることも知っているか?」

「それは初耳だ」

 遠くで叫ぶような声が聞こえた。

「あちらは派手にやっているようですねえ。どうぞ話を続けなさい」

「約束は守ってくれよ。アレには起爆する条件がある。一つ目はあんたらが回収したそれだ」

 ジェイルは顎で血まみれの机の上に置かれたカプセル錠を示した。

「それを飲むと、人間を爆弾にできるのさ。戦場を一掃するほどのな。ただ、これだけじゃあ爆発はしない」

「報告にもありましたねえ。あなたたちの新兵器と思しき人間が爆発しなかった例がある、と。ただ爆弾になっているわけじゃない。何か起爆する条件があるのでは?」

 ジェイルは壁の方向を見ながら話し続けた。

「銃弾で撃つことさ」

「どういうことですか」

「そのままの意味さ。銃弾に貫かれればアレは爆発する」

「味方の犠牲を強いる爆弾ですか。呆れました」

 男はやれやれと言いたげな表情をしていた。

「さて、約束を守ってもらおうか」

 ジェイルは男の方を向いた。

「私達は人間だからな。悪魔のような、非人道的なことはしないさ」

 男はジェイルの縄を解いた。しかし、その手足には枷がはめられていた。


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