尋問
「なるほど。我慢強いですねえ。でも、あなたが情報を吐くまでやめませんよ」
部屋の中は恐ろしく静かだった。
「強情ですねえ。私もさっさとあの女を拷問したいんですがねえ」
床には剥がれた爪が数枚転がっていた。
「なら、さっさと殺せばいい」
「それだと困るんですよ。君達の兵器について聞かなくちゃあいけないからね」
「それしか言えないのか? この国の人間はよぉ」
ジェイルがそれを言い終わるや否や、彼の顔面に拳がのめり込んだ。ジェイルは口から血を流している。
「短気なもんだぜ。俺は、カフスと会えれば何でも話すと言っているんだぜ」
「あの女ですか。あれは恋人なんですか?」
「さっさと会わせろ」
「それに、あなたは立場を分かっているんですかね。あの女に会わせるわけがないでしょう」
「もう殺したから、会わせられないってか」
「いえいえ。私の部下が楽しませてもらってますよ」
男はジェイルの傷口にナイフを刺した。
「さっさと話せば、お望み通り殺してあげますよ」
「くっ。じゃあ、こうしようじゃないか。あんたらが知りたいのはあの兵器についてだろう?」
「そうですよ。さっさと話しなさいな」
「なら約束しろ。話せば、カフスに会わせると。一目でも会えれば、俺を殺されてもいい」
「いいですよ。約束しましょう。私もこんな尋問には飽きていたところですから」
男はジェイルが縛り付けられている椅子の前に立った。
「あの兵器を俺らは天啓と呼んでいる」
「天啓。大層な名前を付けたものだ」
「そして、あの兵器の動力源は人間だ」
「そんなことは知っている」
「なら、あの兵器が人間の生命力を動力源としていることも知っているか?」
「それは初耳だ」
遠くで叫ぶような声が聞こえた。
「あちらは派手にやっているようですねえ。どうぞ話を続けなさい」
「約束は守ってくれよ。アレには起爆する条件がある。一つ目はあんたらが回収したそれだ」
ジェイルは顎で血まみれの机の上に置かれたカプセル錠を示した。
「それを飲むと、人間を爆弾にできるのさ。戦場を一掃するほどのな。ただ、これだけじゃあ爆発はしない」
「報告にもありましたねえ。あなたたちの新兵器と思しき人間が爆発しなかった例がある、と。ただ爆弾になっているわけじゃない。何か起爆する条件があるのでは?」
ジェイルは壁の方向を見ながら話し続けた。
「銃弾で撃つことさ」
「どういうことですか」
「そのままの意味さ。銃弾に貫かれればアレは爆発する」
「味方の犠牲を強いる爆弾ですか。呆れました」
男はやれやれと言いたげな表情をしていた。
「さて、約束を守ってもらおうか」
ジェイルは男の方を向いた。
「私達は人間だからな。悪魔のような、非人道的なことはしないさ」
男はジェイルの縄を解いた。しかし、その手足には枷がはめられていた。




