表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/14

8

 二、三分程歩いただろうか。空港の駐車場らしきところの奥まで来て、ようやく手を離したかと思うと、女性はくるりと俺の方に向き直った。


「まずは、何も言わずに連れて来てごめんね。別に怪しい者じゃないよ。倉橋あかりといいます。日本町に住んでるの。空港で、君が貨物室から出てくるのが見えて……。

 一応聞いておくけど、密航、したの?」


 密航。改めて他人の口から言われ、背筋がすっと寒くなった。そうだ、自分は、犯罪者なんだ。


「あぁ、大丈夫。警察に突き出して地球へ強制送還なんてことしないよ。させないしね。私はむしろ、君のような人がいるんじゃないかと思って空港に来ていたの」


 だから、ね、と付け加えられ、俺は小さくつぶやく。


「……貨物室に、忍び込んで」


「そう……大変だったわね。名前は? どこに住んでたの?」


 俺は自己紹介から事の顛末までをつぶさに語った。生まれ育った町、両親の死、密航の決意、そして、結月との別れ。話し出すと、言葉は止まらなかった。よく知りもしない相手に全てを話せてしまえたのは、彼女がただ静かに俺の話を聞いてくれたのもあるが、それ以上に、誰でも良い、誰かが欲しかった。ただ人が恋しかったのだ。


「そうか……。本当に、大変な思いをしてきたね。行く当てもないようだし、とりあえず私の家においで。大丈夫、悪いようにはしないから」


 本当に、ついて行って良いのだろうか。倉橋と名乗った女性は、何のために俺に構うのだろう。


「私の目的は、家に着いてから説明しよう。話を聞くだけでも良いから」


「……はい」


 わずかの逡巡の後、俺はうなずいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ