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『当機は間もなく着陸いたします。安全ベルトをお締めください。繰り返します……』


 泣き腫らした目をこすり、俺はようやく顔を上げた。


「行かなきゃ……俺は、生きなくちゃ」


 結月の最後の願いを叶えるために。


 着陸はごく静かに行われた。貨物室の扉の上に設置された表示が『RОCK』から『UNRОCK』に切り替わった。俺はそっと扉に近づき、ゆっくりと開ける。外に誰もいないのを確認して、忍び足で出口を目指した。他の客と鉢合わせないよう、乗組員専用の扉に向かったが、出口の辺りで人の話し声が聞こえ、とっさに身を隠した。


「どういうことか詳しく説明しろと何度も言っている! 何故乗客を降ろせないんだ!」


「ですから、月の安全のためです。これ以上は……」


 そんな、ここまで来て、降りられない……? 妹を見捨ててまで来た月に、降り立つこともできないなんて。


「そんなのないよ……」


「……とにかく、客室の扉の鍵は絶対に開けないでください。これは月政府からの命令なんです!」


 そこで俺ははたと気がついた。乗客は降ろせない。だったら、貨物室に忍び込んだ俺は?


 話している二人に気づかれないようこっそりとその場を後にし、貨物室へと戻った。今度も誰ともすれ違わない。きっとこの不測の事態に乗組員も困惑しているのだろう。

 静かに貨物室へ戻り、もう一つの扉の前に立った。この扉の向こうに、地球に生きる者の理想郷、人類の第二の故郷がある。


 深呼吸を一つ。そして俺は、力を込めて新世界への扉を開けた。


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