天使、…です?
別サイトで同じ設定で、ほとんど同じ内容で投稿していた作品です。
ちょっと手直ししてなろうで投稿させていただきました。
私、菱川祐歌は地面を見て小さく息を吐きました。
チャイムが鳴りました。
ここは屋上。
今から授業が始まるのですが、私は教室に戻りません。
…とゆーか、戻れません…
なぜなら、この学校の派手系女子に囲まれているからです。
あぁ!授業が始まってしまう…!!
目の前には同級生が3人。
彼女たちは茶色に染めた長い髪に緩やかなパーマをかけて、決して薄くはない化粧を顔に施しています。
折角、地は可愛いのですからこんな厚化粧しないで清楚さをアピールすればいいのに…
髪の毛だって、この制服なら黒髪のほうが似合いますし、パーマをかけているせいで髪の毛が痛んでいるのが分かってしまって下手すると不潔に見えちゃいますよ?
「ねぇ、ちょっと聞いてんの?」
「マジこいつキモいんだけど」
同級生たちは舌打ちしたり、髪の毛を指に巻き付けたりしてイライラした様子を態度に出します。
私はそれを見て怯えたように身を竦めてみせました。
…もちろんただの演技ですよ?
こうすると、大抵の人は調子に乗りますからね。
それか、よりイライラした様子を隠さなくなります。
同級生たちは両方ともこなしてみせてくれました。
彼女たちはより私に詰め寄り、二人で左右を囲むように、一人が正面に立ちました。
右側の同級生がニヤニヤと笑って、左側の同級生が苛立ったようにフェンスを揺らします。
正面の同級生なんて、般若みたいな顔してますよ…
いやいや、そんなことよりもですね。
どうしてこの地味、平凡、凡庸、モブ系女子の私が彼女たちに囲まれているのかということですよ!
「王司くんに近付くなっつってんだよ」
「つーか、相手にしてもらえると思ってるわけ?」
…だそーです。
王司君…王司武文とはこの学校のアイドル的存在。
茶髪の如何にもチャラ男といった男です。
顔がいいからでしょうか、男女ともに人気です。
…いいのは顔だけですよー?
その王司君は、最近私に何かと構ってきます。
理由は簡単です。
…彼が私の妹に一目惚れしたからでしょう。
ふふ…顔だけいい男は外面のいい女に惚れるんですね。
まぁ、私の妹は性格はマシですが。
彼は私に妹との仲を取り持ってほしいようで、それを見て勘違いしたクソ雌犬…おっと失礼しました、同級生たちが怒ってしまったようなのです。
てか、この展開いつの時代の少女漫画ですか?。
廊下で急に囲まれ、そのまま屋上に連れて行かれてって…
私は地面を見つつ白目を剥きたくなってきました。
できることなら泡も吹きたいくらいです。
いやいや、でもこれはある意味レアな体験なのでは!?
普通はこんな体験好きでも出来ないですしね。
「テメェ、何か言えっつてんだろーが!」
いや、そんなこと貴方言ってませんよね?
目の前の同級生さんが私の横のフェンスを蹴りました。
私が何も言わないことでもっとイライラしたみたいですね。
…女の本性なんてこんなもんですよ…
私を排除したところで王司君がどうこうなることはないと思うんですよね?
むしろ、排除したってことでドン引きされるのがオチじゃないですか。
大体、何か言ったって調子乗ってるとかキモいとか言うだけで私にメリットがないのですが。
私がため息をつくと、何を勘違いしたのか、左側の人がキレました。
「テメェ調子乗ってんじゃねーぞ!」
…あのー、カッターナイフしまいませんか?
彼女の手にはカッターナイフが握られていて、刃は私の方へ向けられています。
キチキチと音を立ててカッターナイフの刃が出されてきます。
…シャレにならないですよ?
とゆーか、それやったら退学って分かってます?
「顔に傷付いたらもう王司君に近づかないわよねー?」
端から近づきたくもねぇよ。
と、言いたいところですが、さすがに本気を出すのも気が引けます。
うーん。でも…このままだとこの人退学だし。
下手すると傷害罪で捕まっちゃいますし。
迷っていると、足元に影が出来ました。
何?と思って顔を上げると、何かが降ってきました。
それは、ふわりと私と彼女たちの間に落ちてきました。
そして、それが口を開きました。
「…女って怖ぇな。女一人に大人数で武器まで使うのかよ」
それは、ゴキ、と指を鳴らしました。
「顔に傷が付きたくねぇなら、散れ」
当然、彼女たちは蜘蛛の子を散らすように逃げて行きました。
助けられた私は、目の前のそれを茫然と眺めました。
…羽、ですね。
助けてくれた人の背中には、羽が生えています。
色はグレー。
とても柔らかそうです。
「…助けてやったのに礼もねぇのかよ」
彼は私の方に振り返りました。
そう言われ、少し困惑しましたが、頭を下げます。
「えっと、ありがとう、ございます」
彼は照れたのか、顔を逸らしてしまいました。
改めて、彼の顔をじっくりと眺めます。
端正な顔立ちですが、彼独自のこう…怖さ、というものが顔に現れていて、多分睨まれたら卒倒したくなると思います。
「あの、…」
勇気を出して聞いてみることにしました。
「あ?」
「…悪魔ですか?」
そう聞くと、彼の端正な顔が一気に鬼のようになりました。
「テメェふざけてんのか!?この羽見て悪魔だと!?眼科行け!!」
「…天使って羽白いですよね?」
「見習いなんだよ!だからグレーなんだ」
なるほど!
天使って見習いだとグレーなんですね。
「…あれ?金髪で目が青いんじゃないんですね」
彼は黒髪で瞳はアメジストのような紫でした。
「…偏見でものを言うんじゃねーよ」
「えー?でも色って重要ですよね?見習い天使さんがそんな紛らわしい色彩してるから私が勘違いしちゃったんですよ。分かってます?」
私の言いように、天使さんは唖然としています。
「…なんで俺はこんな女を…」
彼は、はぁ、と溜め息をついて、落ち込んでしまいました。
「見習い天使さん、落ち込まないでくださいよ。多分今の神様が見てて直ぐに天使にしてくれますよ」
「見習い天使はやめろ。俺にはルークって名前がある。…まぁ、もし神様が見てたら俺の羽はそろそろ消えるけどな」
「え?何か悪いことでもしたんですか?」
「悪いことというか…」
そんな会話をしていると、急に彼の背中の羽が薄れてきました。
「ちょ、本当に消えてますけど!?」
「だろーな。気にすんな」
「気にしますよ!天使じゃなくなってるんですよ!?」
「いいんだよ。俺は天使をやめたかったんだ」
…見習いですよね、ルークさん。
「はぁ…まぁ、人にはいろいろ事情がありますしね」
「…おまえ、本当にアッサリしてるよなぁ」
それ、褒めてますか?
「言っとくが、俺が落ちたのはお前のせいだからな」
…はい!?
私のせい!?
「お前が俺を落としたんだ」
言いがかりだよ、マジで。
あ、ヤバ、素が出てきた。
「言いがかりですよ?私なにもしてないです」
「いや、ぜってぇお前のせいだ」
…しつけぇな…
なんで私のせいにされなきゃなんねーんだよ。
「ほら」
ルークさんは何かを指した。
それは、私の手から出ている。
「なにこれ…赤い、糸?」
赤い糸は、私の小指から、…
「ほらな」
ルークさんの小指に繋がっていた。
「なっ…!!」
「お前が人間だったから、俺が落ちたんだよ」
…いやいやいやいや!
「んな非現実的な!?」
「…天使の存在も非現実的だろ…」
ルークさん、段々私のペースが掴めてきましたねー。
って、赤い糸ってことは、
「私とルークさんって、結婚、するんですか!?」
「まぁ、そーなるだろーな」
「…戸籍とかどーすんですか?」
「神様が何とかすんだろ」
…投げやりな!
「とゆーわけだから」
「はい?」
「はい?じゃねーよ」
…や、だから何がとゆーわけなんだ!!
てゆーか天使ってこんなに口悪くていいのか!?
「俺、お前ん家住むから」
「…て、ちょ、はいぃぃ!?」
「こうして、私と元大天使ルークは同棲を始めたのでした」
「ちょ、ルークさん!勝手に終わらせない!てゆーかあんた見習いでしょ!!」
…end?
◇◇◇
雲の上、この世界ではないところ。
神様と天使が楽しそうに2人を見ていました。
神「…ルーク、素直じゃないですねぇ」
天「本当に!自分が赤い糸を付けろって言ったのに…」
神「そういえば、彼女の名前はなんと言うんです?」
天「えぇっとー…祐歌ちゃんって名前らしいですよー?」
神「そうですか…」
神様と天使は、喧嘩を始めた二人を、楽しそうに見つめていました。
end!
作者のための登場人物紹介。
・菱川 祐歌・
本作のヒロイン。
年齢 18歳。
身長 160cm
家族 両親、妹、弟
小学校高学年から中学卒業まで荒れに荒れた。
高校デビューを目指す(地味)
家族仲は可もなく不可もなく。
本作で妹の事を悪く言ってるが、そこまで嫌いではない。
ルークの影響で赤い糸が見え、切る、結ぶことができるようになった。
・ルーク・
見習い天使様。
年齢 928歳。
(見た目年齢は20~25歳)
身長 183cm
家族 …神様?他の天使?
実はかなり強い力を持つ見習い天使だった。
本来なら大天使になる予定だったのだが、祐歌に惚れて離脱。
てゆーか神様と喧嘩しました。
多分3年間くらいの喧嘩。
人間になると同時に神様のパシリに。
赤い糸を見る、切る、結ぶ、繋ぐことができる。