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6 冬の囁き 

今回のお題は「斬新な衝撃」でした。


氷が舞い、風が刺す。

それがわたしの世界。究極の冬は全てを凍らせる。生命の時を止める。

雪と同じ色の指先は、世界に紛れてあなたには見えない。

時折訪れる陽の光は冷えきった心を暖めることもできずうろたえる。

結晶で出来た髪飾りは一時も休むことなく形を変え、青く艶めく唇を輝かせ、個体となった吐息を血に撒き散らす。


わたしは冬。


世界に衝撃を与える存在。


時に生命を永久に停止させ、

時に生命をよみがえらせる。

生命の力を操るためにある存在。


斬新にも映るその在り方に世界は震撼する。


あらゆる季節のなかでも最強の力を与えられた存在。



春のさえずりも夏の歌も秋の休息も全てを飲み込み、熱を奪ってしまいましょう。

睫毛に寄り添う欠片も全てわたしのもの。





君の恋はどうなったろう。叶ったろうか。

なにも起こらず終わったろうか。

少年時代の胸が苦しくなるような思い出は今も抱き続けているか。

その強さが君にはあるか。

君に残すことのできた生命はまだ息をしているか。


瞬く間に過ぎ去っていく君の時間は君に何を与えたろうか。

雪間に見えた青い月は永遠に君を照らすだろう。


わたしを恨むだろうか。

感謝するだろうか。

冷たい世界を知らしめたわたしという存在に気づいたろうか。

どんな感情もわたしに伝わらぬことを知っていようか。

冬という言葉は知っていても、その真実を知ることはかなわない。

なぜならその価値が君にあるはずもなかろうから。


知る必要もなかろう。

わたしは冬なのだから。

君の手が届いたその瞬間に生命は停まる。

だからこそ知らなくてもよいのだ。


残酷な真実に気づかず生きていくことが君にとっての幸せなのだ。

その衝撃は生命を停めることなく消し去ってしまうのだから。





音にならぬ歌が響きましょう。

この星の熱を白い吐息に変えましょう。

もう一度全てを凍らせてしまいましょうか。

それもよろしかろうて。

春も夏も秋も全て飲み込んで、沈黙の時を過ごしましょうか。あなたの全てを包み込み。


あしたもゆうべも真っ白に、何が善か何が悪か知ることもなく。

しばし平和の時を、流れ行くままに。


わたしはいつでも見守っているでしょう。



わたしは冬。

世界を眠りに導く、者。



次は「春」のお話です。どうぞよろしく。

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