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4 秋

今日のお題は「俺の秋」でした。


春が俺に言った。秋ってつまんない。

それは俺に対する挑戦か、どういう意味だと追求するべきか。

結局チラリ春に目を遣っただけで、俺はまた正面を向いた。

たしかにな。つまらないかもしれないな。

楽しい、つまらんなどは相対的なものとわかってはいるが、かといって、あいつの言を否定することはできない。


春は上気した頬でいつも踊るように歩いている。細く白い足をリズミカルに動かして。

淡く輝く長い髪とスカートを風にのせてふわふわと。誰もがあいつについて行きたくなる。

いうなれば未来だな。希望といってもいいかもしれない。そんな雰囲気を全身にまとっている。

多少口は悪いがそれすらご愛嬌だ。誰からも愛されるんだ、あいつは。


「気にすんな、秋。春はちょっと空気読めなだけさ」

真っ黒い髪に意思の強さを見せるやや太めの眉。赤い口紅は青空によく似合う。そして暑い季節そのままの暑い吐息を含めてケラケラと笑う。この顔にはだれでもイチコロに違いない。

「そこがいいとこでもあるんだけどね」

姉御肌でゆかいなこいつは俺の横を歩いている。裸足のつま先でときどきジャンプする。

言葉であらわせば憧れ。そう呼ぶのがぴったりだ。


夏と俺を挟んで反対側が定位置の冬は、物静かなぬくもりをもって静かに微笑んでいる。雪が持つ温かさは独特で、生き物を凍らせる一方、生きるための力を蓄えさせ、生命のゆりかごにもなる。

銀色の髪は青く冷え、色を感じさせない瞳は想いとエネルギーを吸い寄せる。

これは平安。冷たきやすらぎ。


俺らは4人でひとくくり。限られた土地土地でそれぞれの役目をはたすために在るという。


冬が蓄えた生命を春に橋渡しする。春は芽吹き、夏にバトンを渡す。

すべてが開花し、やがて枯れる。そう、俺の出番が来た。

秋の役目は幕引き。次の世代へ紡がれる生命を冬に託すために幕を引く。

消え行く生命が最後に声高く燃え、崩れ落ちるためにある。


たしかにつまんねぇかもしれないな。でもこれが秋の役目だから。


冬が腕を絡ませてきた。そうか、そろそろお前の出番だもんな。


ずっと先へ進んだ春がこちらを振り返る。つぎはここだと。

夏が急ぎ足でそちらに向かい、おいこしてゆく。


俺はそっと絡めた腕をほどき、春の示した「次に秋がゆくべき場所」へゆっくりと足を進める。


冬もおっつけやってくるだろう。



ずっとこの繰り返し。


地軸32.4度のふしぎ。

それが俺たちの旅。



次のお話は、「夏」です。どうぞお楽しみに。

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