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オカン、残念な子でゴメンなさい




3日の行程を4日かけてようやく領主館とやらに到着した。


目の前には、堅牢な砦と言った感じの城


館じゃ無い!これ、城だし!!


教科書やネットで見た事のある鹿鳴館とかそんな「館」じゃ無い。

宮殿でも無い。正に城!

切り立った岩と森に埋もれるようにそびえ立つ岩の城壁の威圧感が半端ない。




城門を潜った後も、堅牢で重々しい石の城壁や、

綺麗に手入れされた前庭の植え込みをやや他人事のように繁々と眺めながらスヴァリアさんと歩く。



「あまりキョロキョロしない・・・連行されてきたって事を思い出して下さい」



いや、諜報員じゃないってもう分かっているだろうに

そう言ってくるスヴァリアさんの為に、自分的神妙な気配を漂わせて後ろを着いて行く。



が、お仕着せを着た女官らしきキレーな女性たちを見かけて

思わず「ヒューヒュー!姉ちゃん彼氏いるー?」と、某有名な幼稚園児よろしく口笛を吹きそうになって止められたり


体躯の良い騎士らしき野郎どもに囲まれて、口をぽかんとしたままスヴァリアさんと見比べた後、意味も無く、意味ありげに「ふふ」と笑ったら蹴られた。



騎士様達に怪訝な目を向けられたりしながらも調書らしき物に名前を書かされたりして


気付くと窓のない一室に押し込められて湯を持ってきてくれた女性に声をかけられてようやく我に返った頃には隣に居たはずのスヴァリアさんが居ないことに気付いた。




そこでようやく本当に神妙になれた。




領主館に連行されてくる間、スヴァリアさんが甲斐甲斐しく世話を焼いてくれ


私の中では、スヴァリアさんはすっかり「オカン」として刻まれた。


異国の地で2年

アンナさんが第2のオカンなら、スヴァリアさんは第3のオカンだな



銀髪に近い金の髪を後ろに束ね

涼しげな碧い眼

高い鼻梁はすっと通っていていて映画俳優さながらの男前だと思う。

厚い唇が、中々人間味あふれて情に厚そうな感じ

更にその印象を裏切らないオカンぶりだった!





そのスヴァリアさんが居ないだけで既に泣きそう。





「これから、どうなるんだろう?」





怖くなって部屋の隅で膝を抱えて蹲ってしまった。





***



「何だ?未だそのままの格好なのか?」


突然、扉をノックする音と共に入ってきたのは、第三のオカン、スヴァリアさん!



「返事をする前に扉を開けた非礼に目をつぶってやるから居なくならないで!」



半べそだった私の目の前に現れた第三のオカン、スヴァリアさん!

込み上げる嬉しさに思わず抱き付こうとして、ヒラリと避けられた

更にその上、アイアンクローをお見舞いされる。



「何を考えている!むやみに男に抱き付くな!!」



痛い痛い痛い!!

分かった!抱き付かないからアイアンクロー止めて!

てか女の子にアイアンクローとか無いわ!







女官さんが用意したお湯は、体を拭いて足を洗えという事だったらしい。




「加湿の為じゃなかったのか」



「・・・何故そうなる」




布を受け取り

すっかり冷めてぬるくなった湯で足を洗い

スヴァリアさんが持ってきた服へ着替えようとボタンに手をかけたところで後頭部を殴られて止められた



「いきなり男の前で服を脱ぐバカがどこに居る!衝立の向こうで着替えろ!!」





・・・ここに居ます。ゴメンなさい。






***



「旅装を解いたら領主のアデルハイド様との面会を申し込んである」



先を歩くスヴァリアさんへ、雛鳥よろしくニコニコ着いて行く。



ふと、廊下でスヴァリアさんが足を止められた。




「・・・連行されてきたと言う事を思い出してください」



あぁ、そうだったね。

ゴメンゴメン、だからそんな残念な子を見る目でこっち見んな!








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