生活って慣れだよね
アンナさんに言葉を習いながら
たまに一人暮らしのアンナさんの様子を見る為に、数日置きに来ていると言うリカルドさん以外とは会う事も無く数ヶ月が過ぎた。
数ヶ月で判った事は、ここはネシック領のアダン村
国の名前なんて聞いた事が無い名前だし、そもそも発音が難しすぎて言えなかった・・・。
アンナさんの子供達は成人して村を出て以来戻ってくることは無く、それからずっと一人で暮らしているらしい。
リカルドさんは、麓の村で暮らす猟師でアンナさんの教え子らしく、肉を届けたり、アンナさんが作った野菜を卸したりしている。
ここには電話はおろか、電気もガスも無い。
水道も通ってないのでもちろん風呂も無い。
アンナさんの優しさに甘えて言葉の通じない山の中で途方にくれてばかりも居られない。
言葉と共に、生活の仕方を必死に覚えていかないと死ねる!という事はこの数ヶ月で理解した。
だってここ、どう考えたって日本ではない。
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人間、必要に駆られたら嫌でも現地の生活が身につくらしい。
郷に入っては郷に従えって言葉もあるしね。
半年後にはアンナさんから教わった言語で夢を見るようになっていたし
1年後にはリカルドさんと喧嘩が出来るほど上達した。
喧嘩の理由は『良い女は胸か尻か』と聞かれて『足』と答えて趣味が悪いと言われた事だ。
胸も尻も薄い私に対する侮辱と受け取りその喧嘩を買った!
勝利したが何かを失った気がする。
なぜ山賊の様なおっさんと女の良し悪しの基準を見た目で論じる・・・女の良し悪しは愛嬌だろう!?中身だろう??
なぜ一緒になって外見を論じたんだ私!
2年後に、どうやら私はアンナさんの孫として戸籍登録されて居るらしい事が判った。
成人後に出て行った息子が子供をアンナさんに任せてまた出て行ったことにしたらしい。
実際、私を見た時、異国籍で言語が不自由で年齢的に孫だと思ったらしい。
てか、自分の母親が倒れてるのに顔も見せずに居なくなる息子が居るだろうか?
いや、居るらしい。
そして息子ならありえると思ったらしいアンナさんがちょっとだけ不憫だ。
あれだけ口煩い、普段、邪険に扱ったりして親が居る当たり前に甘えていたとしても、母親が家で倒れていれば心配すると思う・・
そして孫だと思った要因に、私の名前・・・アナンリーナと思ってたようだ。
息子が母の名前を入れてくれたと喜んでたらしく
うん、何かゴメン。身体の塩分が抜けそうな気がする。主に眼から。
家名があると知って慌てて戸籍の変更をしたところで、異国のやんごとなき身分なのではと言う話になり領主へと報告する事になった。
報告から数ヶ月後に領主様の使者とやらが面談に来た。
そこで初めて村の人以外の人と会い驚愕する。
(・・・剣・・・だと!?)