誰だ!?マタギでも獣の皮はかぶらないから
言葉は通じない、どこに居るかも判らない、頼りの目の前のお婆ちゃんは瀕死!
後から知ったが、瀕死では無かった。
ただの空腹・・・いや、それってやっぱり瀕死じゃん。
どうやら足を怪我して動けなくなったまま食事が取れず数日たった所に私が現れたらしい。
後は死ぬだけと覚悟を決めた所だったから大丈夫と、何が大丈夫なのかさっぱりな説明をされた
やっぱり瀕死じゃねーか!
出来る限り、放り出されない為にも食事を用意してあげて、甲斐甲斐しく世話をし、お婆ちゃんが動けるようになってきた所で
ようやく何とかボディランゲージで意思疎通をがんばれる様になった。
お婆ちゃんの名前はアンナさんと言うらしい。
私と似た名前が嬉しいのか、長いこと一人暮らしが寂しかったのか
意識が戻ってベッドに起き上れる様になっても追い出される事も無く
その後も孫のように可愛がってくれた。
言葉が通じないが、山をまたヒールで彷徨う気にはなれない。
というか、こんな山奥にお婆ちゃん、一人でずっとここに居るの?仙人か何か目指してるのか?
と、思っていたら更に二日後に獣の皮を被った熊の様な大男が扉の前に立っていた。
「・・・・。」
無言で見つめあう事数秒・・・
「テメェは誰だ!?」
勢いよく扉を閉めてドアノブを押えて考える。
アンナさんに危険を知らせなきゃ!けど、アンナさんまだ足の怪我治ってない!!どうしよう、考えろ私!
「***!!!***!!!」
ドアを叩きながら山賊が何か叫んでる~~~!!
動揺する私を余所に、アンナさんが足を引きずりながら奥の部屋から出てきて落ち着いた声で山賊に応えた。
***
「・・・山賊じゃないんだ」
てかいつの時代に山賊だよ、いや、海賊とかいるし山賊が居ても・・って山奥とはいえ日本に山賊は居るはずは無いじゃん。落ち着けば判るじゃん。
とは言え、どう見ても獣の皮を被ってたぞ。
向かい合ってテーブルに座ってお茶を飲んでいるアンナさんと山賊・・・改め、リガルドさんを眺めながら困惑する。
そもそも、現代日本に獣の皮を被った人が居るだろうか・・・
改めて思った・・・
ここ、日本なんだろうか。
良い歳した大人なのに盛大な迷子をしでかして
仙人のお婆ちゃんと、山賊のおっさんとお茶飲んでる場合なんだろうか・・・
薄々気付いてはいる。
認めたくは無いが。
ライフラインの無い山の中の異国の言葉を使う碧眼のお婆ちゃん。
現代日本のどんなド田舎でも見かけない山賊の恰好をした翠眼のおっさん。
私、いつの間に海を渡った?
心臓がバクバク言って煩かった。