女子会・・・女子って幾つまで?
「アンナ~」
「ふぎゃあぁ!?」
だから女神様、いきなり現れるな!
そして、周囲の者共!もう少し驚け!
「ちょっとは慣れなきゃぁ~?どう?楽しんでる?」
普通に考えて、突然現れたらビックリする。平然と迎え撃てる様にならねば寿命が縮む。
「いや、迎え撃つ必要性は無いだろ」
いや、心臓には宜しくないので撃退しないと私の寿命は確実に縮む!!
「・・・アデルハイド様の訓練の様相は見れるのに、リュシー様の優美な様相は見れないとは、何とも可笑しな。
リュシー様、失礼をお許し下さい。」
スヴァリアさんがリュシー様の前で綺麗に一礼をする。
「――――優美なリュシー様は見れます。・・・突然でなければ。」
そして私は決して訓練の様相は見れないぞ!
足は震えて、腰を抜かす自信はある。
さすがにどこぞの令嬢のように倒れたりはしないだけだ。が、いっそ倒れてしまって、恐怖映像等これ以上視界に入らなければ良かったと思う程には毎回恐怖している。
「ふふふ。リーナの驚く顔は病み付きになるわ!」
やっぱりわざとじゃないか!
「リュシー様ったら、あんまりいじめちゃうと、今夜のパジャマパーティー?とやらに呼んで頂けないですわよ。」
「あらやだ、それは困るわ!私、三着も卸したのよ?ゴメンねリーナ、機嫌を直して?」
「――――パジャマは三着も要らないです。」
「あら、そう?では後でまたお会いしましょう!」
そう言うとリュシー様は優雅な足取りで、別の人垣に歩いて行った。
そう・・・歩いて。
歩いて?
「突然現れる必要性皆無じゃん!!」
「リーナは誂うと面白いからな。」
笑う領主様に悪態をついて、ふと見やると、少し離れた所でスヴァリアさんが、立ち去ったリュシー様の後ろ姿を見つめていた。
――――ふと、気付いた。
スヴァリアさんがリュシー様を見つめる視線・・・これは。
私は、最近、本当に最近、こんな視線を見たことがある。
―――領主様が私に向けた視線と同じ。
「――――スヴァリアさんって、リュシー様が好き?」
思わず呟いたが、思いの外声が大きかったのか、スヴァリアさんの耳にも届いたらしい。
ピクリと表情を変えたのは一瞬。
「ええ。好きですよ。」
何て事の無いように笑顔で肯定が返ってきた。
あの視線を、無かったことにして。
***
スウォンの魂―――――
『女神様の伴侶の魂は、転生したら、運命に導かれるようにリュシー様と出会い、結ばれる。』
この国、この世界で、神話レベルの時代から続く恋物語で、知らない人は居ない。
今現在、客間に通されるはずが、何故かアンナさんとリュシー様の寝室に通されてパジャマパーティーである。
・・・合計年齢を考えると「女子会」とは言いにくくて。
そして、女が集まったらやるでしょう!恋ばな!
「いやあ、別の世界の邪神だったんだけどね、私にしたら犬みたいな子なのよ?」
そう朗らかにケラケラと仰るリュシー様・・・
・・・今、邪神っつった?
「ただ単に、もんの凄ぉ~~~く、完璧主義でねぇ、自分で作った箱庭のくせに、気に入らないとすーぐ壊しちゃうから、いつの間にか邪神とか呼ばれるようになっちゃってたのよねぇ。」
そんなんが女神様の運命の伴侶なの?
いや、深くは突っ込みたくないが、そんな軽く話して良い内容だろうか。
しかし、作られた方の人類にとって、気に入らないからと毎度壊されるとか・・・。
人類にとっちゃたまったもんじゃないだろう。
「そんなんだから、神殺しにあっちゃって(笑)」
笑い処が分かりません。リュシー様・・・。
「消滅する間際に魂に変えて、お父様の世界の輪廻に混入させたら、生まれるたびに悪さするらしくって」
ゑ?
「いつも志半ばに父に排除されて、可哀想だったわぁ。」
ち・・ちなみに志って。
世界征服ですか、そーですか。
・・・地球に魔王って居たっけ?
あ、計画か頓挫して居ない事になってるの。
ありがとー浮気性の神様。
「あまりに可哀想なんで、『どー頑張っても父に滅ぼされるから世界征服なんて無駄よ』って教えてあげたら、」
あげたら?
「泣いちゃったのよ~」
・・・そこは、腹抱えて笑うところでしょうか。
邪神の生まれ変わりで、生まれ変わる度に悪さばかりしてサクッと排除されるスウォンの魂を慰めてあげたら懐かれたらしい。
「その内、何度生まれ変わっても私に会いに来て求婚する様になっちゃったのよね~」
凄いストーカーっぷりですね。
え?愛ですか・・・そーですか。
「それから、元々消滅するはずだったものを残した責任を持て!って、父に押し付けられたのよぉ~」
リュシー様が箱庭を作る時に、父が餞別という名の厄介払いに譲りうけたらしい。
甘い恋物語も、蓋を開けたらこんなもんなのだろうか・・・。
と言うか・・・
「我こそはスウォンだ!って、押し掛けられたりしないの?」
王城に居て、謁見は申し込めば会えるのだ。偽物が来ないの?
「まぁ、リュシー様のご自宅は、誰も知らないですからね。」
「え?ここじゃ無いのですか?」
「神殿に一人じゃ寂しいじゃない?だから、神殿を作って閉じ込めるなら滅ぼすわよ?ってお願いしたら、王城に女神室を作ってくれたから借りてるのよ。」
――――それ、お願い、なのか?
「家にスウォンが来たら分かるわ。」
そして家に辿り着けるのは、スウォンの魂を持つものだけなのだと。
「私が魂に変えた責任を取ったとは言え、きっと、好きなのよ。」
無関心なら、そのまま消滅するのを見てただけでしょうし。
そう微笑んで言い切るリュシー様は、恋をしている目をしていた。
くぅぅ~眩しい!
これぞ女神の微笑み!
いや、正しく女神だけどね!!
けど、これは同時に、どんなにリュシー様を慕っていても入り込めない人が居ると言うこと。
リュシー様に恋をした時点で報われない恋をしていることになる。
スヴァリアさんのあの熱い視線も、きっと受け止めてはくれても、応えては貰えない。
想った相手に想って貰える喜びを獲たいなら、諦めなきゃいけない。
それでも儘ならないのが恋なんだろうな。
「・・・愛し合える人に出会えるって、奇跡だね。」
「そうね。リーナもそういった相手を見つけなきゃね。」
「あら、アデル坊やじゃ無いの?」
ファッ!!
「あら、アデルはダメよ。口説きもせずにいきなり求婚した朴念仁、出直してきて貰わなきゃ!」
・・・恋愛話は、聞くに限るね!!




