表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/43

暖かい場所

 アンナさんが倒れたことで、領主様のプロポーズはうやむやに闇に葬った。




 そして、アンナさんが倒れた理由




「・・・教え子(アデル)が未成年に手を出すような犯罪者(ロリコン)になったかと」




 アンナさん・・私、成人してますってば。

 仮に手を出したところで合法です。

 あ、やだ。自分で言ってて目から汗が滲みそうだよ。






「・・・ところで、私は当初の予定通りに留学生の扱いで構わないのでしょうか?」






「―――――リーナが、そう・・・望むなら。」




 さっきまで、剣を奮っている時の様な満面の笑みを浮かべていた筈なのに。

 無理やり浮かべた笑顔が痛々しい。






「・・・・。」







 ・・・空気が、重い。






「・・・会議が終わったら酒に付き合います。今は会議の事だけ考えて下さい。」







 スヴァリアさんが、領主様を事前打ち合わせに引きずって出かけるまで、屋敷を重たい空気が覆った。





 すまんな!

 私は庶民なのだよ!

 家名があっても、庶民なのだよ!

 お貴族様の妻の座には落ち着けないのさ!


 てか、何でいきなりプロポーズなんだ!

 しかも意味通じてなかったし!





 中央首都で行われる会議は明日、今夜は懇親会も兼ねた、晩餐会が行われる。




 私は、海峡を抜けた、遥か東方にある、「アガリヤ皇国出身」と言う事になった。

 そんな皇国の言語なんか知らないんだが、大丈夫なのかしら・・・?


「ブロアが連れ回していた事にすればいいわ。あの子は一所に落ち着かないから、言語習得期間が無かったと勝手に解釈してくれるはずよ。

 まぁ、アガリヤ皇国の言語を知っている人なんて、この国には数人しか居ないもの。」






 戸籍上だけの父親、顔も知らないけどブロアさんと言うのか。





 と言うか、母親は、どうするんだ?

 心の母は、アンナさんとスヴァリアさんと、カロン女史だ。


 若干一名、お母さんと呼ぶとアイアンクローをくれるが。



 ・・・『お母様』と呼んだら返事するかしら?



 いや、無いな。

 私も命が惜しい。



「ブロアが何人のお嫁さんが居るか知らないもの~。ま、細かい事は、言葉が不自由で通しましょう!」




 アンナさんも大概大雑把だな・・・

 リカルドさんも大雑把だったが、国民性なのか?







 領主様の、中央にある別宅にお世話になっているのだが、領地からは、アデルハイド様付きのメイド3人と従者が一人、スヴァリアさん付きの従者一人、後は護衛が12名付いてきただけだ。


 キッチンメイドやルームメイドを数人、通いの者を用意していて、今日は昼食を用意したら帰るらしく、空いたキッチンを借り、昨日買ったドライフルーツでパウンドケーキを焼いていた。


 何かに没頭していないと、思考の海に落ちそうなのだ。




「リーナ、ここに居たの?」




 振り向くとアンナさんがキッチンの入口に立っていた




「落ち着かなくて。」




 女神様に会って、私が日本から来たことは信じて貰えた。

 三人は何も言わなかったけど、他の人たちはどうだろう?

 宇宙人の様な存在だ。他人がどう思うか知らない。

 気味悪がられたりして、皆に迷惑がかかってしまったらどうしよう。



 会議前でバタバタして聞けなかったけど、私は皆に甘えて、いつまでここに居て良いのかな・・・。



「アンナさん、私は、ここに居て大丈夫でしょうか?」



 アンナさんが隣に腰掛け、私の顔を覗き込み優しく微笑んだ。



「リュシー様が、理を持ち込まないなら居ても良いと仰いました。何も、憂いはありませんよ。」




「・・・気味、悪くありませんか?」




「リーナ、海を渡ると色々な人種が居ます。過去に滅んだ人種だって居るわ。

 リーナの世界にも、色々な人種が居たのでしょう?気味悪かった?」



 フルフルと首を降って否定する。



「けど、差別はあったよ。迫害を受けた人種も居たわ。」




「あら、まぁ。・・・そうね。世界は広いから、民族で争っている地域も、確かにあるわ。

 けど、この国は、人種のるつぼなのよ?リーナの様な黒い目の人は初めて会ったけど、黒髪なら見たことあるわ。」





「私は、領主様のプロポーズを断ってしまったし、何時までも領主館に厄介にはなれません。

 ・・・出来れば、森の家に戻って、アンナさんと暮らしたいです。


 けど、領主館で、数日ですが働いてて思ったんです。

 アンナさんに甘えてばかりじゃダメで、自立したいなって。」





 ・・・だけど、一歩踏み出す勇気もない。





「リーナ、焦らなくて良いのよ?貴方はここに来て、まだ二年目に入ったばかりよ。

 言葉も頑張って覚えたし、常識だって覚えてきたけど、まだ二年目なの。

 二歳と一緒。失敗するのも当たり前。私も、知らない土地に行けば、失敗するわ。踏み出すのが恐いのは当たり前よ。」



 新しい経験を毎日失敗もしながら学んでいけばいい。




「アデルも、一人にはしないと言っていたでしょ?私もついてるわ。」




「・・・ありがとうございます。」




 森の小屋で会えたのが、アンナさんで本当に良かった。






「ところで良い香りね。リーナの焼いたフルーツケーキが久し振りに頂けるのね。」



「ダメですよアンナさん、晩餐会に行く準備をしなきゃ。フルーツケーキは一晩寝かすんですからね!」




「そうねぇ。寝かせると美味しいものね。けど、一切れ位頂きたいわ。お茶を入れるから、ね?」




 しょうがないなぁ~、アンナさん、甘いもの好きだしね。


 ・・・目を離すと、一本丸々食べちゃうものね。







 ***




 日が傾いてきて、スヴァリアさんが馬車で迎えに来た。



「晩餐会に行くのに、馬車酔いで動けなくなっては困るから、早目に向かう。」



 うん。さすが気遣いの出来るお母様(スヴァリアさん)である。



 けど、早いよ!まだ髪を結えてないよ!



「・・・何をしてたんだ。」



「・・・お茶してました。」




「はぁ~~~、・・・馬車の中で結う。」




 行くぞ、と馬車に押し込まれ

 スヴァリアさんに髪を結われながら王城にむかうことになった。




 スヴァリアさん、有能すぎるよ。

 何故に女性の髪が結えるのさ。





「・・・ドレスを脱がした後には、着せなきゃいけないから?」




 痛い痛い痛い!!!


 アイアンクローやめて!!死ねるから!



「なぜお前はそう、品性を疑われる発言をするのだ!」





「いや、髪を結う機会を考えた結果が思わず口から」





「妹が居るからだ!」




 な、なるほど。




「それで手慣れているのか。・・・ドレスを脱がせた後でも安心 いいぃ、痛い!いだいですぅ!!」




「・・・黙れ」




「ふふふ、仲が良いのね。親子のようだわ。」




 アンナさん、娘にアイアンクローする母親は余り見ないです。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ