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取り調べがいつの間に就職面接になってたらしい。

模擬演習1日目が終わり、夕食前にアデルハイド様に呼ばれて昨日の執務室へ行く


ガクブルする足をどうにか前に進めて

スヴァリアさんの後ろから恐る恐る入室して席に着くまでが、物凄く長く感じられた。


既にカラカラに喉も渇いて、緊張もピークだよ


頑張れ私! 負けるな私!




「どうした?そんなに緊張しなくても悪いようには扱わないと昨日も言ったであろう?」




いや、いや、いや、あのサイコパス領主様の絵面を見た後の『悪いようには扱わない』は発言通りの意味合いで受け取れないって!




「リーナの処遇だが、残念ながらアダン村には戻してはやれぬ。あそこは、国境と近いからな。

個人的にはリーナが諜報員では無いと信じているんだが、領主としてはそのままには出来ん」





ですよねぇ・・・。

私も、こんな諜報員とか居ないと思います。

自分で言ってて悲しくなるが、事実だ。




「荷物だが、危険物は無いと言っていたが、こちらには無い技術だ。すまないが研究施設に引き渡す事になる」



「あぁ・・・その、時計だけは。時計だけは手元に置かせて下さい。祖父の形見なんです。」



他は財布の中の諭吉も姫君(笑)の免許証も差し出しますんで!




「・・・まあ良いだろう。そして身柄だが領主館に置く事にする。砦にいつまでも置けないので明日向かうように、同行は引き続きスヴァリアが行う。」




「・・・はい」



とうとう囚人かぁ~



「良かったな」



隣でスヴァリアさんがサラッと笑顔で言う。



良くねーよ!!











***





模擬演習の間は領主様は砦にいらっしゃるそうなので

私はスヴァリアさんと領主館へ行く事に。


最後の晩餐だと思うと、もったいない精神がいつもより多く発動したらしく

いつもより多めにライ麦パンを食べたのが頂けなかった。


・・・砦で食べた朝食はもれなく土に還った。

スヴァリアさんに介護されながら小高い丘の上にある領主館へは昼過ぎに到着した。








フラフラになりながらやっと地面に足を付けて見上げたのは壮言な館

これぞ館だな。といった館。

白壁にスレートの屋根が光を反射していて、前庭の芝生と、玄関アーチまでの階段の白のコントラストが続いている。

とてつもない重厚感溢れる正面玄関に向かって階段を行くのかと思いきや

それを横目に、階段脇を進むと一階部分に一回り小さい、それでも十分に重厚な扉が現れる。



家族用の玄関かな?



身長の高いスヴァリアさんでも余裕な程に大きく、重厚な扉の前には栗毛をきっちりと編み込んだ若草色のドレスを着た女性が居て私たちを出迎えた。



「ただ今戻りました。バルト様はどちらに?」



「荘園へ視察に出ております。後、二つ刻の間にはお戻りになられるはずです」







「カロン女史、こちらはリーナ・アナンです。領主館で身柄を預かる事になりましたので面倒を頼みます。お部屋へ案内して下さい。」







「リーナ、こちらはセレスト・カロン女史です。これから彼女の師事を受けて頂く事になりますので着いて行くように」




「はい。よろしくお願いします」







「・・・畏まりました。では、こちらへ」



カロン女史の視線が痛い・・・。

何だろうこの視線・・・最初から蔑みの視線を受ける謂れは無いぞ?!

初対面だろうに、私何かしたかしら・・・




部屋までの道すがら、すれ違った女官さん?に何事か伝言して先導するカロン女史





廊下を進んで行くと使用人部屋らしき場所に連れて行かれる。


あれ?牢屋じゃないの??



「後で湯が届きますので、身支度を整えなさい。

制服を支給しますので着替えるように」




「はい」



何と言う高待遇・・・

何故だ?





湯で体を拭いて、女官の方々と同じ服に着替える。

女官だと思ってたがどうやら違うらしい。

「女官は王城に仕えております」

そして、すれ違うお仕着せの女性達は、メイドさんらしい。


のだが・・・・



「何でメイド服じゃないの!!?」




薄桃色の腰を紐で縛るタイプの服で裾も長い。

村でアンナさんから頂いたワンピースとは違い、さらりとした柔らかな生地で気持ち良い。



が、裾が長い。




背中の紐を編み上げて胸を絞るがブカブカ。





明らかにサイズが合ってない。








「・・・これは、酷い」







カロン女史の視線が蔑みから憐れみに変わった。






「困りましたわね」





後々、聞いたのだが

この時、子どもに任せる事が出来る簡単な仕事からさせようと部屋付メイドに見習いとしてつける予定だったらしい。



が、人前に出る事もあるため制服は必須なのだ。



その制服が、一番小さい物ですら着れなかった。




カロン女史が、私の細やかな胸元を見つめてため息をこぼされ

カロン女史の憂い顔が麗しすぎて、こちらも違う意味でため息をこぼした。







割と重労働だが、表に出ないと言うことと制服が要らないと言うことでキッチンメイドに暫定的に決まった。




ふむ。囚人として牢屋に繋がれることは無さそう。


いつの間に就職面接を受けたのか疑問だが、当面の就職先をゲットした。






***



「今日からお世話になります!宜しくお願いします!」





丁寧に挨拶をして顔をあげると

そこはリカルドさんバリの屈強な野郎共の巣窟だった。






・・・厨房じゃなく、傭兵ギルドに来たようだ




「おう!嬢ちゃん頑張んなよ!ダース、面倒見てやれ!」



傭兵ギルドのギルマスの様だが、歴とした料理人、ダリウスさんが叫ぶと

奥からふわふわとした栗毛の男の子が来た。




「宜しくお願いします!」




「・・・こっち」







んー

なんとも愛想の無い男の子だ。


仲良くやれるだろうか。






「・・・これ」




そこには麻袋に入った大量の芋。


皮を剥けということかな?

私より片言なダース君からナイフを受け取り

椅子に並んで座り無言でひたすら皮剥きをした。





夕食の賄いに呼ばれる迄、実に二時間も。



これ、使いきれるのか?

と、思ったが使いきれるのか。スゲーな。



翌日はひたすら鶏肉を捌いて午前中は終了。

午後はまた皮剥き。




アンナさんの家にいた頃から一通り教わっていたが、量が桁違いすぎる。


指先にタコが出来るのもすぐだろう。






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