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この世を面白くっ!  作者: 尾関 ライチ
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高菜兄妹と異次元の神様

 三日後の話である。


 今日は日曜日であり、キリスト教を信仰している俺にとっては本来教会へ行き、礼拝を受けるべき日なのだ。

 

 金曜、土曜と、大学がなくて、ずっと村野と曲作りをしていた。

  

 軽音部員が結局全員死亡していたと、土曜の朝に発表された。


 しかし俺はそれ以上に軽音部という団体が事実上消滅した現実に、ため息をついていた。

 あの火災事故は、俺から気に食わない奴らを奪っていったばかりか軽音部まで奪われた。


 ただ、俺が軽音部を再興させる気はなかった。今のままでは学校から援助や部室は与えらることはない。どう俺らを売り込んでいこうかとこれからのことを考えるのに今は精一杯だった。


 ・・・・・。


 谷口たちも、もっと早くどこかで出会っていたら、俺ももっと涙を流せられたのだろうか・・・。

 物思いにふけって、食欲がなくなったりしたのだろうか・・・。


 改めて、人はいつかは必ず死ぬという当たり前のことを思い知ったことが一番衝撃的、だった。


 ただ、『殺してしまいたい』という衝動に駆られることは、始めて・・・、であるどころかたくさんあってしまっている。

 

  初めは小学生のころ、今はいない父さんが買ってくれたギターを学校にもって行ったときに、気に食わねえやつに迫られ、ギターの入ったギターケースを蹴られた瞬間だったかな。


 当時からキリスト教を信仰していて、人を傷つけてはいけないことも知っていた。まとめると、人の嫌なことはしないって教えられてきた。

 でもさ。俺は小学校高学年になって、自分で物事を考えられる自我がはっきりしてきた年頃になって。

 

 だんだんと、だんだんと、だんだんと・・・、疑問に思い始めていた。

 同じクラスで、俺のギターを後に蹴った男が別の男の娘K君の机の中を荒らしたりランドセルの中身を隠したり落書きされたりと、その男の子は誰からの助けもなく、ゆっくりと学校から消えていった。


 なぜやり返さない!別に同じことをやり返してやれというわけでもないのに。


 同時に、後に俺のギターに手を出した奴らだったので、早いうちに殴り飛ばしておけばよかったと今でも後悔している。

 

 キリスト教の教えに反しているだって?

 じゃあやられたままでよかったのかよ!?まさか5万円もしたギターが、息子のクラスメイトたちの手によって、購入後4日で壊される結果を伝えなければならないのか?


 俺のせいだったかもしれない。壊されるかもしれないから持っていくのはやめるように注意されていたのに、目立ちたい、すごいと言われたいという野望から俺はこっそりとギターを自分の部屋の窓から外に出しておいて、いつもどおり学校に行くように見せかけて、俺の部屋の方へ回り込んでギターを回収する。


 そして、学校へ持って行って、一回でも良いからみんなの前でギターを弾いてすごいって言われたかったし、女子にかっこいいって思われたかったし。


 俺の通っていた学校には、二限目と三限目の間に、20分程空きがあり、それをみんなは『中休み』と呼んでいる時間に、さっそくギターのことを言われ、何か弾いてみてくれの大合唱。まさにヒーローになった気分だった。


 勉強が得意なやつ、野球がうまい奴、サッカーが上手い奴など、人はそんな奴らにばかり集まっていく。まるで電灯に群がる虫のように。


 今もそうだ。ただCコードを弾くだけで歓声が上がっていく。

 次に初心者では難関とされるFコードを弾いてみた。『すゲーお前F弾けるのかよ』という声は、野球上手なA君。この瞬間、俺はクラスでの『凄い奴ら』の仲間入りを果たしたと確信した。


 そして、K君に嫌がらせをしていたやつの方を向き、ニコッと笑った。


 しかし20分というのは短く、すぐに終わりのチャイムが鳴り出した。

 俺は昼休みにもう一度弾くと皆に約束し、机に戻った。

 

 俺のギターを蹴られる約2時間30分前のことだったけど。


 

 ケータイが鳴り出した。俺は昔を思い出すのを辞め、誰が電話してきているかを確認したあと、電話に出る。


 「元気か?彩柊あやひ」」


 「兄ちゃん!?あたしは元気だ!今すぐ会いたいぜ、兄ちゃんっ」


 こんな大きく、でも不思議とうるさいとは思えない声は兄だからか。

 高菜彩柊。柊音しゅねの双子の姉妹で、今は父さんの弟の経営する神社に居る。

 ただ、部活遠征で一週間程家を開けていたが、今日帰ってくる日であった。確かに俺は今まで忘れていました。


 まっすぐで情熱家。昔からよくなついてきた可愛い妹だ。思い込みが激しく、少し影響されやすいのが玉にキズかな。まあ、人を面白がってからかう、特に俺に対してやられるのだが、そこは許容範囲内である。


 「今どこだ?迎えに行くか?」

 「いや、いいよ兄ちゃん。翔君や柊音ちゃんのお昼作ってあげてて。あたしの方は弁当もらったからいらないよ」

 「東町5丁目のバス停だろ?何時に着くんだ?」

 「11時半くらいだなっ。あたしの調査によると」

 調査って、かっこよく言わなくてもいいだろう。

 

 「ところで兄ちゃんはどうだった?この一週間。まあ、兄ちゃんのことだから『特に代わり映えない毎日』とか言うんだろ?」


 ああ。確かにいつもの俺だったらそう言ったかもな。

 しかし自分の通う学校の、軽音部室がある北講道館がほぼ全焼して、軽音部員全員死亡、俺は今どうしようかと悩んでる最中だと、妹に打ち明けた結果、「兄ちゃんも大変だなあ・・・」と短く返されて終わった。

 

 

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