其の六
「それで?」
「ん?」
怒りをおさめた霊夢が真剣な顔で尋ねる。
「あんたがあの妖怪を殺した力、あれ何?」
「だからさっきも言ったとおり俺はあいつに襲われて気絶したんだって。眼が覚めたらここにいたんだよ」
「何言ってんのよ。あんたが気絶したのは妖怪をグシャグシャにしてからじゃない」
「ーーえ?」
続きを促し、ことのあらましを霊夢から聞く。
「知らない…。俺はそんなの…」
「知らないってそんなわけーー、…もしかして条件付きの能力ってこと…?」
一人で勝手に考え込む霊夢。
しかし、ふと気になる語句があった。
「なあ」
「…なによ?」
「"能力"ってなに?」
素朴な疑問である。
彼女がさっきから何度か使っていた言葉だ。
「ああ、能力ってのはーーーーー」
「へえ。驚いた。神とかの他にこの世界にはそんなものまであるのか」
「まぁ言っても、しょうもないものから凄いものまでピンキリだけどね」
「ふぅん…。それで条件付きって?」
さっきから疑問ばっかりで少しうんざりしてくる。
霊夢も少しめんどくさそうだ。
「例えば私の"空を飛ぶ程度の能力"は私が飛びたいと思ったらいつでも飛べる。"火を出す"能力なら手とかから出せばいい」
「うん」
「でも、"水を操る"とかだと動かすものが近くにないといけない、という条件が出てくる。さっきの"火"の能力と違うのは"出す"と"操る"の違い。要は"蛇口から水を出す"か"出した水で何かをするか"ってこと。あんたと私の見解が違ってるのは、多分あんたが気絶させてから能力を使ったんだと思う」
「…つまり、俺の能力は気絶することが条件ってこと?」
霊夢の説明から推測して先に言う。
話を止められて霊夢が少し不機嫌になる。
「そう。まあ、あんたが能力持ちだったらね。こっちのみんなが全部がもってるわけではないもの」
「外来人にはあるものなのか?」
「あるときもあるし、こっちに来て出る人もいるし、持ってない人もいて、それぞれね」
「そっか…」
能力…。
少なくともむこうではなかったはずだ。
あの化け物を殺すなんてどんな力だよ…。
むこうでも気絶したら発動するのか…?
そうだ。
「むこうにはいつ頃返してもらえるんだ?」
なるだけ早く帰らないとむこうは大変な騒ぎだろう。
そう思い質問するとーー
「あら、むこうには帰せないわよ」
「え?」
突然の爆弾発言に脳が思考を停止する。
「結界が安定してなくて異世界状態だって言ったでしょ。紫がどうやって連れてきたか知らないけど、結界は千年くらい前から不安定だから少なくともあんたが生きてる間はどうにもならないでしょ」
「は?」
言葉が入ってこない。
「どうにかしたいなら紫に直接聞けばいいけど長期的になると思うから、その前にあんたの拠点探しに明日人里に行くわ。今日は泊めてあげるから、明日に備えて養生しなさい」
それでも頭を無理やり動かして言葉を紡ごうとするが
「えええええええ!?」
出てきたのはそんな言葉だった。
院長先生、俺どうなるのかな…?
すみません。
色々あって遅れました。
七話です。
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