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東方小説  作者: リンダ
導入
3/9

其の三

「えと、死ぬって…、、え、どういうこと?」


誰だこの子?

こんな子近所に居たか?

最近、引っ越してきたのだろうか?

だとしても何でこんなところに?


疑問が渦巻く。

でも少し冷静になって考えてみる。


今この子、「妖怪」って言わなかったか?

「人間が」ても言ってた。

ちょっと邪気眼入ってるのかな?

彼女によって作られた設定だろうか?

服装もあれだし…。

都会はこんな服が流行ってるのだろうか?

でも聞き間違いだろう。

さすがにこのくらいの歳になって「妖怪」って…。



「そのままの意味よ。日中ならまだ分かるけどもう夜になるわ。さすがにこの時間の一人歩きは感心しないわね。人里の人間なら知ってるでしょ?」



前言撤回。

やっぱりこの子邪気眼か厨二病だわ。

何、人里って?

何でこの子この街を取り仕切ってるような言い分なんだ?

服が巫女服に似てるから妖怪退治をするって設定なんだろうか?

急に馬鹿らしくなってきた。


「あ」


「?」


そんなことより、早く帰らないと院長が心配してるだろう。


「ごめん!!俺早く帰らないと、家の人が心配してるからっ!!」


勝手にに話を打ちきり階段を駆け下りる。

このまま彼女を放っておくのは心苦しいが、なんとかなるだろう。

この街に居るのならまた会えるだろうし…。


「え、ちょっと!!」


後ろで声が聞こえたが無視する。

院長に心配はかけたくない。






------


振り返らず走り続けると道中の景色がいつもと違うことに気づく。


この道はこんなに暗かっただろうか?

そもそも設置されていないのか、街灯がひとつも灯ってない。

月明かりでしかあたりを見渡せない。


この道はこんなに長かったろうか?

いつもならもう孤児院についている頃なんだが。


それにこの道の横に広がる森はこんなに深かったか?

街の明かり一つさえ差してこない。



最後にひとつ。

あの先で、二本足で立っている犬のようなものはなんだろうか?


獣臭い。

そして血生臭い。


何かを食べてる。

鹿か何かだろう、角が見えた。

器用に前足を使って食べていた。


犬というのは口で捕食するものだ。

足を使うときも地面に押さえつけるようにして食べる。

断じて熊などのように手でつかみ食べたりはしない。


では、あの二つの足で肉をつかみ食べている生物は何だ?

顔は紛れもなく犬だ。

体は痩せほとり、四本の足はやはり犬のように細く、腰の辺りからは長い尻尾が映えている。

体を覆う体毛からは狼を連想させた。


バキ、バキと骨を砕く音がする。


「う、、あ、」


動物の解体など見たことない俺は怖じけずき低く声を洩らしてしまう。

込み上げる吐き気を懸命にこらえた時には既に獣はこちら気づいていた。


「しまった」と思ったが、もう遅い。

ゆっくりと獣がこちらを振り向く。


獣と目が遭う。

見てしまう。黒く濁ったその瞳を。

何も考えられなくなる。

体が凍りつく。心臓を鷲掴みにされたようだ。


「っ!?」


それでもここで全力で逃げられたのは生物としての逃走本能か。

だが、その選択はこの状況において正しくもあり、間違いでもある。


「 」


俺の動きに反応した獣が動き出す。

完全に獲物を追う目つきだ。


距離は十メートル弱。


故に、この程度の距離簡単に埋められる。


跳躍した獣に引き倒され正面から倒れこむ。

背中には獣の感触。


「 」


下卑た笑いのような声がする。

同時に、後ろから、顔いっぱいに息を吹き掛けられる

充満する血と、獣の匂い。

理解させられる。

自分は今から殺されるのだと。


「う、、、あ、、ぁぁぁああああああああああああ!!!」


後ろに向かって肘を打つ。

何かを狙ったわけではない、単純に死ぬことに足掻こうとした。

体のすべてを使って獣を引き剥がそうとする。

自分の持てる限りを振り絞る。


「あ」


その最中、獣の顔を正面から直視する。

それは本能の塊。

まるで自分を餌としか思っていない目。

根本からお前とは違うんだと思わされる。

同時に初めに目が遭った恐怖が思い出される。


万力のような力に押さえつけられ、次第に抵抗する気力もなくなっていく。


「 」


首筋に牙があてられる。

再び笑い声が聞こえる。

死が近づいてくる。


白かった意識が黒く濁っていく。

視界も、何もかもが黒く…。

水に墨汁を垂らしたように徐々に意識が暗く沈んでいく。

深く、深く、自分が消えてなくなるような。







そうして意識が反転した。


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