其の二
最初から少し手直ししました。
目が覚めるとそこは見慣れた場所だった。
祭壇があって賽銭箱がおいてある。
石造りの境内から長い階段がのびていて、
辺りには森のように木やら竹やらが生い茂っている。
どこいでもあるような寂れた神社。
そこの境内に俺は寝ていた
一瞬で理解する
ここは俺が最初に居た神社だ。
孤児院に行ってからも記憶の手がかりがないかとよく来ていた。
俺にとっては庭のようなもの。
でも、どうしてここにいるのだろうか?
少なくともここに今日来た覚えはない。
それに少し新しいような気がする…。
改修工事でもあったのだろうか?
だけど、少なくともここに神主などはいなかったはず…。
きりがなかったので、最初の疑問を考える。
どうして俺がここにいるのか。
前後の記憶を探ってみる。
駅で遭った女性、彼女に遭ってからの記憶がない…。
彼女の仕業だろうか…?
いや、あり得ない。
第一、彼女が俺みたいな人間を相手にして何の得がある?
考えてもいまいちぴんとこない。
「でも、綺麗な人だったな」
ふと、彼女の容姿が思い出される。
金の髪に金の瞳。
髪を横から二つ束にして垂らし残りは後ろで束ねていて中華風の紫色の服を着ている。
白い肌に胸元には大きな塊。
容姿的には俺と同じくらいだが、雰囲気が大人を感じさせた。
断言できる。俺が今まで出会ったなかで最高の容姿を持っていた女性だ。
「夢、だったのか…?」
そんな考えが浮かぶ。
彼女と会話した事は俺の妄想で、ただここで寝てただけ…?
一番無難な考え方だ。
金髪美人との接点なんて俺にはない。
「うわ」
すごい恥ずかしい。
羞恥心に顔が真っ赤になる。
何考えてんだよ、俺…。
そんなに飢えてんのかよ…。
熱を冷まそうと顔を扇ぎながら空を見るともう暗くなってきたのがわかった。
「あ」
帰らないと。
院長が心配してるだろう。
工事については、帰って聞けば良いだろう。
急いで立ち上がり階段に足を向ける。
ふと、いつもは思わないはずなのに急にお賽銭を入れたくなった。
振り返り財布から百円硬貨を取り出し入れる。
「罰当たりなことして、すいませんでした」
やり残したことも無くなって再び階段へ向かう。
すると、後ろから声がかかる。
「あんたが生きようが死のうが私には関係ないけど、賽銭を入れてくれたお礼に忠告だけはしておくわ」
振り向くと。
「どうやってここに来れたのかはどうでもいいけど、人間がそんな道を一人でしかもこんな時間に歩いてたら妖怪に襲われて死ぬわよ」
そこには、紅白という言葉が似合う巫女服に似た衣装を着た女の子が立っていた。