:序章
やぁ、初めまして、始めまして。はたまた久方ぶりと言ったところだろうか。とまぁ、名乗るとしよう。俺の名前は、津軽。
俺の正体は、とある物語を見れば解るとして、少し俺の話を聞いていただきたい。
俺は、普段一人なんだけど、ある日、素敵な子達に出会って、その輪に長居してしまったんだ。
藍色の瞳を持った天才。
武家出身の女学生。
どこまでも心優しいヴァイオリニスト。
どこまでもひねくれたコンダクター。
艶聞好きの霊感少女。
どの子も、それはそれは素敵な子なんだ。
実に平凡でいて、非凡で、曖昧な何かに好かれる、不思議な彼等。
しかし、彼等は死んでしまったんだ。
結末はこうだ。
藍色の天才は、狂おしい愛により殺された。
女学生は、世に貢献しようとして、力を使いすぎて殺された。
ヴァイオリニストは、現実と向き合った瞬間、殺された。
コンダクターは、絶たれた命のままに、愛故に縛られ殺された。
少女は、思いを絶てないまま、時の運命により殺された。
いや、実に悲しい。
『この運命』は、生憎全員が死に至ってしまった。
……おや? これは…。
あぁ、どうやら、彼等には違う運命があったらしい。
……あぁ、これは実に平和だ。平和で、平凡で、平穏な、何もなさそうな、何も起きなさそうな、日常の流れ。
面白くなりそうだな。これは見る価値がありそうだ。
死ぬ運命から、その輪廻から外れた彼等の話。どういう結末になるか、楽しみじゃないか。これなら寝ることを忘れて、一気に読めてしまいそうだ。
それじゃ、見てみようか。
違う運命。
『彼等が俺に会わない』運命。
さて、あの子は、彼は、一体どんな結末を見るのだろう……。
良かったら、君もどうだい?
面白さは保証するぜ…?