長野 2
昨日の続きを描こうと思って昼休みに屋上に行くと、僕の描いた青い線は、虹になっていた。五色だけど。
まさか僕以外にこのキャンバスを見つけた人がいたとは……。
いや、これを描き加えた人がキャンバスを持ってきた張本人だということもあり得る。というか恐らくそうだろう。
昨日僕が友達と一緒に帰るのを断って、放課後ここに来ていたらその人と鉢合わせたかもしれない。
だが今の時点で鉢合わせてしまうと、いまいち面白みに欠ける。
どうせなら、この作品を完成と呼べる段階まで描きこんでから会いたい。
描く人がもう一人いるとなると面白くなってくる。とりあえず何か描き始めよう。
筆を取って意気込んで描き始めようとしたが、早くも躓いた。
五色の虹を七色にしようと思ったのだが、あとの二色が何色か分からない。
適当な色を塗って虹に見えなくなってしまったら台無しだし、わざわざ図書室などに調べに行くのも面倒だ。
五つの線を遠目で見ていた僕は突然ひらめいた。
そうだ。これはカラフルな五線譜だと考えよう。我ながら良いアイディアだ。
五つの色が残ったまま乾いているパレットに水をつけて溶かし、筆でぐちゃぐちゃに混ぜた。
鮮やかな色が混ざり合って様々な色を作り出していく。
それらは混ぜていくうちにみるみる暗い色になり、ついには黒と茶色の中間のような色一色だけになった。
「真っ黒にはならなかったか……まあいいや。」
僕は虹色の五線譜に作った色で黙々と音符を描き込んでいった。