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「ってなわけで、あーしは共有おけまるー」

「お、おけまるか、そうか」


 よし、考えるのやめたいぜ。


「ネコチャンは?」

「……海里くん、養ってくれなそうだしにゃー……」

「うるせえな」


 お前はもうちょっとまともに生きてくれ。


「ふむ、なら私が本妻か。順当なところに落ち着いたな」

「えっ、どこが!?」


 あれ、リンの頭の中では今の会話がどうやって接続されたわけ?


「ハーロットと話し合ったんだけどさー」

「え、うん」

「もうテフィリアリア星系人全滅したって想定で、んでもいちよ、因子は宇宙に残しておきたいわけ」

「……うん?」


 翻訳がおかしいのかな? よく分かんねえぞ。


「ごしゅ、前のカード覚えてる? ほら、はじめはなんも書いてないって言ってたやつ」

「あー……『階梯上昇(ランクアップ)』か。そういえば完全に忘れてたな。あれがどうしたんだ?」

「あれ、あと4枚くらい使ってくんね?」

「……1枚しか残ってないぞ。まず理由を言え」

「や、したらごしゅがテフィリアリア星系人の領域まで届くからさ」

「から、何だ」

「あーしが孕めるようになる」

「ぶふっ」


 お前は何を言い出すんだよ。


「そ、そもそもあれだろ、クレイお前、人間じゃないんだろ?」

「ん? や、けどナノマテリアル製なのはごしゅも一緒じゃん? 身体が何から作られてるかとかそんな重要? 普段食べてるもんだって遺伝子組み換えされまくってんじゃん?」

「……それはそうだけど?」

「んでたぶん今、ごしゅの身体すっげー中途半端な状態になってて」

「……そうなのか?」


 ぴくり、と猫屋敷が反応する。若干申し訳なさそうな顔で見てくるが、何だ? お前は関係ないだろ。


「自然妊娠とかはまず無理だからさー」

「…………お、おうそうか」

「とりま、アウグスティウルグス(注:翻訳不能概念です)を1類生命体のとこまで持ち上げてくれたら、あーし設備無しでも孕めるはずだから」

「よ、よし、ちょっと待て、待ってくれ」

「おけおけー」


 これ絶対打ち上げで菓子食いながらする話じゃねえんだって。さっきからポッキーが減らないんだよ。


「まぁ私はしばらく孕む予定はないが、海里が望むなら――」

「だからお前は気が早いんだって!!」


 話がややこしくなるから黙っててくれ。


「クレイ。ナントカ生命体とかはどうでもいいが、その状態で、海里の精子は地球人を孕ませられるのか?」

「あ、うん、そこは問題ないんでね? 地球人って自然妊娠率どんなもん? 所詮4類生命体だしわりかし高いんでね?」

「知らん」


 リンが猫屋敷に視線を向ける。「なんでも知ってると思わないでにゃー……」と返されたが、律儀なのでちゃんと調べてくれた。


「健康的なカップルが半年間性交渉を続けた場合、80%くらいは妊娠するらしいにゃ」

「へー、思ったより低いんだな」

「……え、それで低いん? マ?」


 クレイは素で驚いた様子で、ポテチを持つ手が止まってる。


「……お前んとこの星は?」

「えーっと…………、自然妊娠でしょ? ……ほぼ0じゃね? いや、0.000何ぱーとかはあると思うけど」

「逆になんでだよ!!!!」


 俺のツッコミにクレイも返せないでいると、猫屋敷が何かに気付いたように「あ、」と漏らす。


「排卵しないってこと?」

「あ、それそれ。あえて身体弄んない限り、女側に妊娠機能とか残ってないんだよねー」

「長生きしすぎるエルフの子供が増えない理論にゃ……」

「…………そういうことか」


 人口増えるわけねーわそれ。


「3等臣民は皆出生のタイミングで弄られてるからタイミング見れば妊娠出来んだけど、|アイドウィフィティフィ《注:翻訳不能概念です》使うパターンがほとんどかなぁ」


 何を使うんだよ。謎概念怖いよ。


「んま、あーしは自然妊娠でもおけまるー。出来るように準備しとくべ」

「お、おう……」

「海里、私もだぞ」

「そうか」

「……おい」

「なんだ」

「私は、本気だからな」

「…………っぽいな」


 リンが全部俺を騙すために演技してたのだとしたら、いくらなんでも演技が下手くそすぎるんだよ。そもそも俺を騙す理由もないしな。


「……まぁ、そのうちな」

「言質、取ったぞ」


 スマホを取り出した。録音アプリ起動されてる。いつからだよ。失言待ちしてた?


「色恋に巻き込まれるのは御免にゃぁ……」


 猫屋敷がシュワシュワする麦のジュースを飲みながら、ぼそりと呟いた。お前はいつそれ取り出したんだよ。さっきまで白ぶどうジュース飲んでたじゃん。……白ぶどうジュース……まさかな……。

 

 ……なんだか、色々とやらないといけないことが増えていく。


「ごしゅー」

「海里、返事は急いでないからな。明日まで待つぞ」

「もうちょっと待ってくんねえ!?」


 リンは真顔でそう言って、隣に座るクレイは俺の腕を抱きながら菓子を食う。


(……やっぱチキンだわ俺。お前なら、もうちょい上手く立ち回れたのかなぁ)


 でもまぁ、たぶんなるようになるだろ。

 少なくとも、悪いようにはならないはずだ。

 だって、俺は前と違うから。今こうして振り回されてるのは、学生時代からダンジョン一筋で、ここまで攻めてくる相手に慣れてないだけだ。きっとそうに違いない。

 三十路過ぎるまで停滞していた俺にも、ようやく春がきたらしい。なんか、思ってたのとだいぶ違うけど。

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