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第ゼロ夜 その1

 こんな夢を見た。

 冬が、長すぎたのだ。

 もしかしたら、私たちは出会えていたのかもしれない。故郷の、あの麗らかな春の日に。

 人波が途絶えない交差点で、ひまわりのように佇む君を見つける。微笑みながら手を振る君は、あの頃と同じように咲き誇っていた。その瞬間、胸が締め付けられる。時間は止まってなどいなかったのだ。通学路の曲がり角で勝気に咲いていた花が、もうあの時の花ではないように。たとえ今も美しくとも、記憶の中の鮮やかさには及ばない。

 私たちの間には、言葉にできないほどの思いが澱みのように積み重なっているのに。瞳を見つめれば、零れ落ちるのは昔と変わらぬ、とりとめのない世間話ばかり。あなたはもう、あんなに大切だった感情も、とうに廃れた話題も、時の彼方へ置いてきてしまったようだ。夢の中のあなたは、ただ微笑んで「先月の桜、奇跡のように綺麗だった」と語る。私は項垂れ、四月の終わりを迎えた今、まだ手遅れではないと自分に言い聞かせることしかできない。

 無情にも信号は青に変わり、日常へと急かす。灰色の厚着の下に隠した、埃を被った古い情詩を、あなたはまだ覚えているだろうか。……いいえ、分かっているはずだ。その詩の鼓動が、年月を経てもなお、疼き続けていることに。だからこそ、あなたは淡々と別れを告げる。幾千もの人混みから現れ、私に一時の「空歓喜」という名の毒を与えて。あなたは太陽の射す方へと背を向け、私はこの孤独な交差点を渡る。

 あなたが待ち焦がれた色褪せた過去にも、私が届くはずのない遠い未来にも、二人が重なり合う場所はどこにも存在しない。

 夜空に三日月が独り、静かに研ぎ澄まされ、暮色があなたの髪に溶けていく。淡い石鹸の香りが私の一日に染み込み、堪えきれない涙が視界を滲ませる。薄桃色の春霞の中、届かぬ手を伸ばし、あなたを強く掴もうとした……。その時、ようやく気づいた。懐かしきこの街に、これほどまでの花が溢れていたことに。

 だが、それもすべては一夜の夢なのだ。


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