第3書 狂人弟
暇だ。僕は今、非常に暇だ。平日はシュエイドさんは仕事でいなのに、シュエイドさんに教えてもらわないと、固有魔法の感覚を掴めない。もう属性魔法も、平素魔法もほとんど覚えた。案外一瞬だった。だいたい1ヶ月ぐらいかかった。前まで一番苦戦していた火の魔法も…
「フレイヤムール」
前にかざした手から赤い魔法陣が出てくる。そしてその周りに一回り小さい魔法陣が2つ出てくる。そこから火球が放たれる。
もう、魔法陣3個ならこのとうりだ。…って
「やっべ!アクアリムート!」
ドリルのような水を生成し、素早く飛ばす。火球に当て、火を消火させる。
「ふぅ…。危うく火事になるところだった…。シュエイドさんがいないと意味ないし、帰るか。テレフォーン。」
足元に白い魔法陣が現れ、その後、家にテレポートする。
固有魔法ともう一つ習得できてないものがある。それは平素魔法の魔法陣の省略。シュエイドさんは当たり前のようにやっていたんだけどな。
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海沿いの道を歩く。
「固有魔法…。僕のはどんなのだろうな…。」
タッタッタッタッ…
前から走る音が聞こえる
「うん?」
同じぐらいの年齢の金髪の少女が全力で走ってきている。
「どいて!」
「へ?」
モーセは少女に手で横に押される。
「うわっ!」
バッシャン!
モーセが海に落ちてしまった。モーセがなんとか這い上がってきて、外を見ると、少女は少しだけ先にいた。身長が低いからか、速く走れていない。
「なんだアイツ…」
「待ちなさーい!」
少女が走って来た方向から、スーツを着た銀髪の男が走ってくる。なんだあれ。…もしかして誘拐とか…?
モーセは道に登り、地面手を置く
「アイフール!」
手を置いた場所に魔法陣が2個現れ、地面から尖った氷が生えてくる。尖った氷は前方にどんどん生え、男まで届く。男の足は氷で挟まれ動けなくなる。
「うわっ!なんだコレ!」
「なんか…追いかけてた子…困ってそうだったので。」
声を聞いて男はこちらを向く。
「君か。なんてことするんだ。まったく。私はあの子の執事だぞ。」
「しつじ?そんな偉い人なのか?あの子。」
「あの方はこの国の王女様だ。8歳で魔法を習得し、魔法のレベルは一般人なんかよりは断然上!魔法陣2個レベルの属性魔法なら完璧に使える!そんなこのエースト王国の王女、モア様!その執事の私をお前は止めたのだ!そんな君には罰を与えてやろう。…って、君普通にアイフールを使ったよな…。アイフールは氷属性の魔法陣を2個使う魔法。君まだ子供だろう?よく使えるな…。」
「まあ、教えてもらった人が優秀な人で。」
「そうか。ファイヤレイ。」
火属性の魔法陣2個の魔法で火炎を放射し氷を溶かす。
「君にやってもらいたいことができた。私はこの国の優秀な魔法使いは全員知っている。師は誰だ?話を付けて君を王宮へ連れて行くことにする。」
「シュエイド・ロードベントです」
「しゅ…シュエイド・ロードベント!?!?」
男はとても驚いた顔で言ってきた。声が裏返っているほどだった。
「何そんなに驚いてるんですか?」
「…貴様、姉さんの出会いというのは本当か…?」
「ね…姉さん?」
男の顔は急に険しくなった。そんな事は僕にはどうでもいい。今、姉さんって言ったよな…。この人…まさか…
「私の名はジーン・ロードベント。シュエイド・ロードベントの弟で、"たった一人の"姉さんの弟子だ!」
「は…はぁ。」
男は明らかにイライラしていた。足をコツコツさせている。
「たった一人なはずだぞ!私は…私は!姉さんの!!たった一人の弟子なのだ!!!!」
大げさな身ぶりと手ぶりで、力強い声で言ってきた。先ほどまでの丁寧な口調とは180°違う。
「そ…そうなんですか…」
「それなのに!!貴様がっ…貴様がぁーー!!!!どうしてだぁーーーーーー
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ズズッ
「行儀悪いぞ。ジーン。スープはすするもんじゃない。」
「だって…姉さんが悪いんですよ!」
なんでコイツ、家まで付いてくるんだよ!あのあと思いっきり走って逃げたのに…。なんかシュエイドさんと一緒に来たんですけど!
「姉さんが私をたった一人の弟子だって言ってくれたんですよ!それがどんだけ嬉しかったか…誇りだったかっ!!」
ものすごくうるさい。食事中に立ち上がって、これまたすごい身ぶり手ぶりで話している。せっかくの美味しい夕食が台無しだ。
「そんなこと言ったけ?」
「え…」
少しの間、沈黙が流れる。
「う"ぁ"ーー!!どれだけ私が姉さんに認められていることを誇りに思っていたことか!!う"わ"ぁ"ーー!!」
ジーンは泣き初めた。机をバンバン叩きながら、ガラッガラの声で叫んだように言うので何を言っているのか分からないところもあった。あとコイツ…本当にシュエイドさんの弟なのか…?
ジーンはシュエイドに抱きつく。
「ええさん(姉さん)…ヒクッ!ええさん(姉さん)…ヒクッ!…なふあええ(慰めて)!」
「はぁ…。よしよし。」
シュエイドさんはジーンの頭を撫でた。あっ。こいつただのシスコンだ。というか…、大のオトナが泣いて自分の姉に慰めて貰ってるとか…。ヤッバ…
「あと、モーセは養子だ。弟子なんかじゃない。お前にとっては甥だな。」
ジーンは急に泣き止み、こちらをギロッと睨んだ。ゲッ…。
「養子ぃ…?お前…姉さんの弟子だけでなく、子供にもなるとは…。許さんぞっ!」
「うわぁーー!!」
モーセは急いで逃げる。ジーンはそれを追いかける。
「待てっ!」
モーセは玄関の扉を開けて外へ飛び出す。ジーンもそれを追う。
「何か…マズイこと言ったか…?」




