第9話
魔王城の広間に、柔らかな気配が満ちていた。
「ポナ……本当に、戻ってきたのだな。」
魔王は目を細め、どこか信じられないように、しかし嬉しさを隠しきれない表情でポナに歩み寄った。
その手つきは驚くほど優しく、ポナの頭をぽん、と撫でる。
「クゥ!!クゥ!!」
甘やかされているポナの横で、王子と勇者は戸惑いを隠せないでいた。
「ええと……これが、あの“恐ろしい魔王”……のはず……ですよね?」
「そうだな。あの時とは雰囲気が違う。」
魔王は二人に視線を向けると、気品ある動作で席を示した。
「遠路ご苦労だった。まずは座るといい。誤解を解かねばなるまい。」
三人が席につくと、魔王は静かに、しかし真剣な声で語り始めた。
「私が“人間に害をなす魔王”と呼ばれた理由……。世界の均衡を保つため、私は魔物たちを抑え続けてきた。だが、魔物が急速に増え、私たちだけでは抑えきれなくなった――」
王子と勇者の表情が固くなる。
「それじゃ……本当に悪いのは……」
「魔王ではなく、増えすぎた魔物たちということか。」
魔王は重く頷く。
「魔物が何からできているか知っているか?」
人間たちは知らないというように目を見合わせた。
魔王は静かに言う。
「魔物は……人や動物の怨念から生まれる。」
王子には心当たりがあった。
そのとき――
城の外から轟音が響いた。
ドォォォン――!
石壁が震え、城の窓が揺れる。
「魔物の……襲撃だ!」
「城の結界が破られたのか!?」
魔王は立ち上がり、手を広げてポナを庇う。
「来るぞ……!ここで迎え撃つ!」
闇の中から、咆哮が迫ってきた。




