第4話
翌朝。
まだ太陽が地平から半分ほどしか顔を出していない時間だった。
王城の中庭は、冷たい霧が薄く立ちこめ、
静けさの中に旅立ちの緊張が漂っていた。
ポナは兵士たちに囲まれながら、
ふわふわの尻尾を膨らませて大きく伸びをする。
(……いよいよ、魔王さんに会いに行くんだ)
胸の奥で、期待と不安がこっそり跳ねた。
そこに、軽やかな足音が近づく。
「おはよう。」
声の主は、昨日見かけた王子っぽい人だった。
やわらかな微笑み――だが、
その奥に隠れた複雑な表情を、たぬいは見逃さなかった。
(なんでそんな顔してるの……?)
その王子っぽい人はしゃがみ、ポナの頭にそっと手を添える。
「僕はリヒト。昨日は……ごめんね。魔王を倒せ、なんて国王に言われて驚いたよね。実は魔王が悪だとは、私は思っていないんだ。実際は魔王が魔物の脅威を退けていたと、勇者が帰還した時に国王との会話をこっそりと聞いたんだ……」
ポナは「クゥ」と鳴き、
それが「じゃあ仲間だね」の意味であることを伝えた。
リヒトは少しだけ安堵したように微笑む。
「それにしても君は不思議だ。小さな体なのに、気迫があって……見ていると、なぜか守りたくなる。」
(ぼく、守られる側じゃないんだけど……)
ポナは尻尾をゆらゆら揺らしつつ、
少しむずがゆい気持ちになる。
そこへ、国王が姿を現した。
「魔物の被害が広がっておる。まずは北の村へ向かい、状況を把握してくれ」
ポナはきゅっと背筋を伸ばし、力強く鳴いた。
それは「任せて」の合図。
だが国王は続けた。
「そして……リヒト。お前も同行せよ」
「国王陛下、承知しました。」
ポナは「クゥッ?」と首をかしげた。
王は重々しく告げる。
「魔物の脅威はもはや他人事ではない。お前自身の目で見て、耳で聞いてくるのじゃ。そして、魔王を討伐せよ。」
リヒトはしばし沈黙した。
だがゆっくりと頷く。
「……わかりました。」
リヒトはポナの隣に立ち、優しく微笑む。
「これからよろしくね。」
ポナは尻尾をぱたぱたと振った。
リヒトの同行は心強くもあったが――
(……でも、王様には魔王さんを守る目的、絶対にバレないようにしなきゃ)
胸の奥でひっそりと決意を固める。
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