第20話 番外編2
世界に平和が訪れてから、さらにいくつかの季節が流れた。
ある日のこと。
魔王城の庭にふわりと光の柱が降り立ち、その中から柔らかな声が響いた。
『――ポナよ。』
ポナは「クゥ?」と声を上げ、光へ近づく。
『長きに渡り、世界を救ったその心。その優しさと強さに、我は祝福を授けよう。一日間、“人間の姿”になる力を与える。』
次の瞬間、眩い光がポナを包み込んだ。
「……あれ?」
そこに立っていたのは、小柄な子どもだった。
ふわふわの耳はそのまま、しかし手足は人間。
丸い瞳は好奇心でキラキラしている。
「わ、わたし……しゃべれる!?」
初めての言葉に、本人が一番驚いた。
――
その頃。
魔王デュンケルハイトは部屋の前で腕を組んでいた。
「ポナを見なかったか?」
「さっき庭へ行っていたはずです。」
側近のナットが答える。
だが次の瞬間、廊下の奥から軽快な声が響いた。
「まおうさんーー!!」
デュンケルハイトとナットは同時に固まった。
聞き慣れた気配、しかし聞き慣れない“人間の声”。
そこへ走ってきた子どもは――
「えへへ!まおうさん、ナット!」
ポナだった。
「…………ポナ、なのか?」
「そうだよ!!どう?かわいい?」
得意げにくるりと回るポナ。
デュンケルハイトは言葉を失い、ナットは目を丸くした。
「かみさまがね、にんげんになるちからをくれたの!だから、きょうはにんげんなの!」
「そうか……しかし、あまり騒ぐな。廊下を走るなと言っ――」
「うにゃーん!!」
ポナは跳ねるように走り出した。
そして――
デュンケルハイトのマントに飛びついたり、ナットの書類を全部ひっくり返したりした。
しまいには、魔法部屋のスイッチを押して爆音を鳴らして、城の兵を全員気絶させてしまった。
それらの悪戯は、いつもの悪戯が可愛く見えるほどだった。
「ポナ!!!」
「ご、ごめんなさーーーい!!」
怒られながらも逃げ回るポナ。
人間の足に慣れていないので、廊下を転びながらジタバタしている。
ついには捕まえられ、デュンケルハイトの腕の中に抱えられた。
「……まったく。姿が変わってもお前はお前だな。」
「へへ……おこった?」
「当たり前だ。」
隣でナットがため息をつく。
「魔王様がポナを甘やかすから調子に乗るのです。」
「え、ナットもおこってる……?」
「怒っていますとも!」
二人に両側から説教され、ポナはしゅんと耳を垂らした。
しかし、次の瞬間。
デュンケルハイトはふっと笑い、ポナの頭を撫でた。
「……だが、人の姿も悪くない。」
「ほんと!?ほめられた!!」
嬉しさのあまり、ポナはまたマントにしがみついた。
「こら、また走るな!」
「はーーい!!」
ぽかぽか嬉しそうに跳ねるポナを見て、ナットは頭を抱えつつも笑った。
「一日だけらしいからな。今日は付き合ってやるか。」
「うん!きょうはいっぱいあそぶの!!」
こうして、
“人間になったポナの一日”は、騒がしく、にぎやかで、
魔王城に久しぶりの大笑いをもたらしたのだった。
番外編まで読んでいただきありがとうございます。
魔王とナットはまるで母親のように、ポナの成長を見守っています。
ポナは叱られながらも、元の姿でも毎日のようにいたずら三昧で過ごしていると思います。
これで、『ただのたぬき、前世は魔王のペットでした。』の更新は一旦お終いです。
読者の皆さま、ここまでお付き合いくださり本当にありがとうございました。
よろしければ、評価・ブックマーク・コメントよろしくお願いいたします。




