第12話
暗闇の中、どこからか冷たい風が吹きつけ、ポナは縮こまった。
「クゥ……クゥ……」
気が付けば、ポナは見知らぬ場所にいた。
床は黒く、空気は重く、息をするだけで嫌な気配がまとわりついてきた。
そのすぐそばでは、あの悪魔が薄い笑みを浮かべていた。
「目が覚めたかい?」
ポナはうなり声をあげて後ずさる。
「グゥ……!」
悪魔はポナの反応を楽しむようにしゃがみ込み、ひどく優しそうな声を作った。
「怖がらなくていいさ。
君には“ちょっとだけ”手伝ってほしいだけだから。」
ポナはかぶりを振る。「イヤだ」と言いたかった。
だが悪魔は構わず続ける。
「君の“浄化の力”……あれはね、本当に貴重なんだ。魔物を浄化するあの光。あれを逆に利用すれば――」
悪魔の瞳が怪しく光る。
「浄化ではなく、“強化された魔物”を生み出すことができる。」
ポナの心臓が、どくん、と強く鳴った。
(……いやだ……そんなこと、できない……!)
「君は気づいていないだろうけど、その力は、この世界でもっとも純粋だ。だから“反転”させれば、同じだけ強力な闇を作れる。」
悪魔はポナの額に手を伸ばした。
ポナは必死に身をひねる。
「クゥッ!!」
しかし、黒い鎖のような魔力が足元から伸び、ポナは動けなくなった。
「おとなしくしていてね。これから君の力を、少し“調整”させてもらうよ。」
悪魔が指をかざすと、ポナの体に冷たい闇の魔力が絡みついた。
胸が痛い。息も苦しい。
温かくて優しかった浄化の光が、引きずり出されていくようだ。
(魔王さん……リヒト……ジュル……)
ポナは震えながら、心の中で名前を呼んだ。
(だれか……助けて……)
悪魔は満足そうに笑い、ポナを抱き上げる。
「君の力を“闇に変える”準備ができたら、新しい魔物をどんどん生み出してもらうよ。世界はもっと混沌に満ちる……あぁ、本当に楽しみだ。」
ポナは涙を浮かべ、ただ小さく鳴く。
「……クゥ……」
その声は、とても小さかった。
けれど――
きっと、あの三人には届くと信じていた。
(……絶対に……戻るよ……魔王さんのところへ……)
暗闇はさらに深く、重く、ポナの周囲を閉ざしていった。
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