第11話
戦場へ向かう途中、空気が急に冷たくなった。
リヒトが足を止め、周囲を警戒する。
「……何か来る。」
次の瞬間、黒い霧が渦を巻き、闇の裂け目が開いた。
そこから現れたのは、異様な笑みを浮かべた細身の影――悪魔だった。
「ようやく来たか、魔王デュンケルハイト。君を待っていたよ。」
魔王は一歩前に出る。
「貴様……戦争を裏で操っていたのは、お前か。」
悪魔は楽しげに肩をすくめた。
「操る? ちがうちがう。ただ 燃えやすい薪 を積んだだけさ。人間は勝手に火を点けるからね。」
ジュルが怒りに震えながら剣を握りしめる。
「なぜ戦争なんて起こした! 民が苦しむ理由がどこにある!」
悪魔はひどく優しい声で答えた。
「理由なら、簡単だよ。――憎しみが増えれば、魔物が増える。魔物が増えれば、この世界はもっと混沌に満ちる。そして混沌は……我ら悪魔の糧になる。」
ジュルが歯を食いしばる。
「ふざけるな……!」
そのときだった。
悪魔の視線がふいにポナへ向く。
「へえ……可愛いコを連れているじゃないか。ずいぶん澄んだ光を持っている。不快だな♪」
ポナは低く「グゥ……」と唸る。
魔王が一歩前へ出る。
「その子に触れるな。これは私の家臣だ。」
しかし悪魔は薄く笑い、指を鳴らした。
闇の触手のようなものが足元から伸び、ポナをひと息で絡め取った。
「クゥ!? クゥゥッ!!」
「ポナ!!」
デュンケルハイトが手を伸ばすが、悪魔の闇がそれを遮る。
「返せ!!」
「返すわけないだろう?このコ……とても希少だ。ずっと価値がある。」
悪魔はポナを抱えたまま、闇の裂け目へ後ずさる。
「世界をもっと混沌にしよう。だから私は――この子を使わせてもらうよ。」
「待て!!」
魔王の叫びもむなしく、悪魔の姿は闇へと溶けていった。
ポナの小さな鳴き声だけが、最後に残った。
「……クゥ……」
闇が閉じると、世界は再び静寂に包まれた。
魔王は震える拳を握りしめる。
「必ず取り返す……。どんな力を使ってでも……この手で。」
リヒトとジュルも頷き、剣を構え直す。
ポナを救うため。
戦争を終わらせるため。
そして――悪魔を倒すため。
三人は闇へと歩みを進めた。
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