第10話
闇を裂くような咆哮が響き、魔王城の大扉が大きく揺れた。
「来るぞ!!」
魔王が声を張り上げると同時に、影のような魔物が何体もなだれ込んでくる。
ポナは怯えながらも魔王の横に寄り、リヒトとジュルは剣を構えた。
「こいつら……さっきより数が多い!」
「こんな短時間で、ここまで……?」
魔王が前へ踏み込み、黒い炎をまとった一撃で魔物を薙ぎ払う。
ジュルも続いて剣を振るい、リヒトは援護に回る。
「ポナ、離れるな!」
「クゥッ!」
数十分の激闘の末、最後の魔物が浄化され、蝶になって飛んでいった。
静けさが広間に戻ると、リヒトは息を整えながら口を開いた。
「……魔物が増えている理由、分かったかもしれません。」
魔王と勇者がリヒトに視線を向ける。
「魔物は怨念から生まれる、とあなたは言いましたね。その怨念が急増している理由……それは――」
リヒトは拳を固く握りしめた。
「隣国周辺の戦争です。」
魔王の表情がわずかに揺れる。
「戦争……あの付近で起きているものか。」
「はい。国同士の衝突は激しさを増し、民は苦しみ、憎しみが渦巻いている。それが“魔物の増加”に直結しているとしか思えません。」
ジュルは険しい顔で続けた。
「つまり、魔物の源を断つには……その戦争を止めるしかない。」
魔王はゆっくりと立ち上がった。
「戦争は人間同士の問題だ。だが、このままでは世界そのものが壊れる。……私も行こう。」
リヒトとジュルは同時に頷く。
「共に行きましょう、魔王デュンケルハイト。」
「戦争を終わらせるために。」
ポナだけが、不安そうに小さく鳴いた。
「クゥ……」
その声を聞き、デュンケルハイトはそっとポナの頭に手を置く。
「心配するな。守ってやる。……もう失わないようにな。」
こうして、リヒト・ジュル・デュンケルハイト、そしてポナは
世界の均衡を取り戻すため、戦争の地へ向かう旅に出るのだった。




