pipkとタイツにあげたあれを収納したこれ(髪の毛)
pipkとタイツにあげたあれを収納したこれ
※飛龍と春蕾の話
散髪に行ったことのなかったせいで、家にいた頃は好き放題に伸びていた髪の毛。邪魔になれば自分で鋏を持って切っていたために、ザンバラ髪で、ひどく不恰好な格好だったとは思う。学校でも先生から、美容院でちゃんと髪を切るように、と言われ、そんなお金はない、と母に言われた言葉をそのまま返していた。
櫛を通され、整えられる髪の毛。男の子なのにこんなに髪が長くていいのかと、そう思ってはいるが、飛龍が楽しそうであるために何も言わないことを選択した。
前髪は眉の上で揃えられ、腰まで届くほどの後ろ髪は同じ長さに切り揃えられている。散髪も全て、飛龍が行った。
「お前は綺麗、春蕾は別嬪さん」
前髪を切られた時、世界が明るいことを知った。髪を結ばれた時、自分が軽いことを知った。
今日は簪ではなく、頭で一つに括ったお団子に龍が刺繍されたシニヨンカバーを被せられた状態。手先が器用な飛龍、大抵のものは何でも自分で作ってしまう。
置かれた櫛を手に取り、飛龍の後ろへと回る。髪ゴムを外して髪に櫛を通す真似をしてみた。
「私のも梳かしてくれるの? ありがとう」
笑いながら、されるがままを選択した飛龍。料理をする時だけは頭の上で一つに纏められているが、それ以外ではただ結んでいるだけ。櫛を通して、髪の毛を結んでみる。初めてのことで、髪が半端に結べていなかったり、ゴムと髪が絡まって、お世辞でも上手いとは言えない。やり直しても、結局は同じ。結び直すだろう、と思っていたのに、飛龍はそうせずに黒マスクを手に取る。
「今日はこのままでいるよ、春蕾が私のためにやってくれたんだものね」
それでも、飛龍は、鏡に映った自分の姿を見て嬉しそうに笑っている。