pipkとタイツにあげたあれを収納したこれ(車)
pipkとタイツにあげたあれを収納したこれ
※ルチアーノとキャロルの話(訂正:2024/4/23)
法定速度なんてものはない。夜の道路、車通りが少ないそこ。
ハンドルを握る、派手な色のサングラスをつけたルチアーノは、気分良く車を走らせている。車の間を縫うようにハンドルを捌くのを見ながら、速度に怯え、シートベルトを握り締めブレーキがかかるのを待った。
「どうだ? キャロル! 気持ちいいだろ! やっぱ男はこうじゃねえとな!」
ルチアーノに与えられた仕事がなんなのかは、わからない。預かり物の大きなアタッシュケースは、今は大量の札束が入ったアタッシュケースへと姿を変えている。それは今、足元に隠すように置いてある。
飛龍は外へ、リチャードは家に客を招いて仕事をこなさなければならなかった。ならドライブついでだ、と外へと仕事に出るルチアーノに車に乗せられ外へと連れ出された。
「お前がもう少し大きくなったら、俺の車のハンドル握らせてやるよ! 男の楽しみ、ちゃんと教えてやっからな!」
男が車に拘るのは何故だろうか。
ルチアーノは自身の車に対して執着を見せ、誰かに触らせるのを嫌がった。助手席やらに乗せるのはいいが、ハンドルを握らせることは言語道断らしく、おそらくそれが原因で飛龍と喧嘩をしていたのは記憶に新しい。
こんなにスピードが出ているのに、器用に片手でハンドルを操作し、頭を撫でてくるルチアーノ。その拍子に簪が取れ、髪が散らばった。
「悪い、大丈夫か?」
減速する車。路肩に停車し、スピードが無くなったことへよ安堵を覚えることができた。力を込めて握っていたせいか、掌にはシートベルトの跡が残っている。
「キャロル、ちょっと髪触るぞ?」
シートベルトを外され、体を持ち上げられて背中をルチアーノに向ける形になる。髪を編み込まれ、髪ゴムで止められる。簪は手の中にあり、刺されていない。
「こっちも可愛いじゃねえかよな? リボンがありゃ、もう少し洒落たもんにできたけど、我慢してくれ」
バックミラーに映る自分の顔。上げられていることの多い髪が、今は下に靡いている。
「……ぐらっちぇ」
「どういたしまして」
シートベルトの装着を確認すると、ルチアーノはアクセルを踏み込む。速度に怯え、再びシートベルトを握り締めた。