pipkとタイツにあげたあれを収納したこれ(仲良く、)
pipkとタイツにあげたあれを収納したこれ
※飛龍と春蕾+αの話
「赤は私の国では縁起のいい色なんだ。身につけておけば、春蕾にきっといいこと起こるよ」
蓮の簪で固定される髪の毛。鏡に映る自分の顔は、見窄らしかったあの頃とは違う。
「……しぇいしぇい」
「どういたしまして、よくできました」
言葉がわからないために、飛龍は言葉を教えてくれた。
ありがとう、数字、飛龍、春蕾。今、飛龍の言葉で理解できるものはこれだけだ。
「さ、朝ごはん食べよう。お前の好きな卵のお粥、作ってあげる」
黒マスクで傷だらけの顔を隠し、飛龍は手を差し出してくる。その手を取り、共に部屋を出た。向かう先は、生活居住と来客の際の応接室を兼ねているリビングだ。
「おいおい、また粥かよ。キャロルもよく飽きねえな」
運ばれた鍋の中の粥は、湯気を立てていて、米特有の安心できる匂いを漂わせている。文句を垂れるのは、向かいのソファを一人で占領しているルチアーノ。何も言わずに、ただ粥を口に運ぶのは仕事机でキーボードを叩いていたリチャード。
胃袋の中に粥を落とし込むと、飛龍は簪がずれないように加減しながら頭を撫でてくれる。
「文句あるなら食わなくてよろし。そもそも、お前のために作ったと違うよ」
家にいた頃は、暖かい食事なんて給食か自分を家に上げてくれた親友の家以外で、滅多にありつけなかった。
家での食事は、飲んだくれの男と母が残した食べ残し。押し付けられた後片付けの合間に、それを食べて夜を凌いで朝を迎えていた。
あの冷たい食事は好きではない。食べているだけで悲しくなる。
「てめえに言ってねえよ。キャロル、お前、たまには違うもん食ったら? 今度はオレが飯作ってやるよ」
英語もまだわからない。だから、否定も肯定もできずにいると、飛龍がルチアーノに食ってかかった。
「こいつは春蕾よ。変な名前で呼ぶな、ヤリチン」
机に手をついて、身を乗り出す飛龍。ルチアーノも足で体を支えながら同じようにして、ほとんど顔がつくほどに、お互いの距離は近まった。
「うるせえよ、ガバマン。つーか、こいつの名前、なんだかんだでまだ決めてねえだろうが」
「ワタシの穴、ガバってないしもうやってないよ。お前と一緒にするな、便所ブラシ。それに、言ったはずよ。こいつのこと好き勝手していいのワタシって」
茶碗を置いたリチャードによって耳を塞がれているため、二人が何を話しているのかはわからない。だが、罵り合っていることは顔でわかる。
銃は出さないでほしい。あれはうるさいわ焦げ臭いわ怖いわで、どうも好きになれそうにない。
早くおかわりが欲しい、けれどこの二人の喧嘩が終わるまでは望めない。
鍋から湯気が消え、腹が悲鳴を上げる。