pipkにあげたあれを収納したこれ(三者面談)
pipkとタイツにあげたあれを収納したこれ
※凜と宗太郎の話
表には立てない人間を親に持つ子や自分のように攫われた末にここで生活をしている子供など、わけを持った子供が学びを得る場所。
この学校のような私塾で教鞭を握るのは木村凜、女の先生だ。
「木村せんせー、おはよう!」
今は週に二日だが、きっとこれからはもっと増える。
「はいおはようさん。ちゃんと宿題やったか?」
黒い髪を靡かせたジャージ姿の凜は、煙を蒸して自分のことを歓迎してくれる。
プリントを取り出し、見て、と差し出す。
「うん、やったよ!」
この地域では日本語がわかる唯一の人。
家で学べることは限られている。それに、まだ言葉を理解しきれていない。
「宗太郎、どうだ? だいぶ喋れるようになってきたか?」
「……あんまり」
日本にいた頃、友達がつけてくれた宗太郎の名前。男の子らしくてかっこいい、だからせんせーこれで呼んで、と頼んだ。誰にも言わねえから本名教えてくれよ、と言われて、やだ、と答えたのはここへ来てすぐのこと。
授業の内容は日本語の読み書きと、この国の公用語の勉強。それが終わるのはだいたい正午頃。昼食を持ってきていないことと、凜の休憩時間を考慮してこの時間となっている。
時間の合わせて、迎えにやってきた飛龍と手を繋いだ。
「おい、これ仕入れといてくれ」
「あいわかった。リチャード渡すするよ」
教師なのに、凜は武器を持っている。子供の誘拐の多いこの街、教え子守るためならどんなもんも持つってもんよ、と武器の手入れをしながら言っていた。
「んだあ? どうしたよ」
「……こいつワタシのなのに、なぜお前とはよく喋るか」
不機嫌な声。怒っているのかと、不安になって表情を伺おうと目線を上げる。
「しゃあねえだろ。こいつ、まだ精一杯なんだしよ」
「不公平よ。春蕾、にこりも喋るしない日あるのにお前といるとよく笑うしお喋りするよ」
それに気が付いた飛龍が頭を撫でてくれる。
煙草を蒸し始めた凜。子供の前で吸わないよろしね、飛龍の苦言に、構いやしねえだろ、とこちらに同意を求めてくる。煙草は気にならない、だから大丈夫。日本語で言われたために頷けば、飛龍の眉間に皺が寄る。
「んま、そういうこった。つーかおい、お前っつーかお前らだけど、宗太郎が考えてる時に答え出すなよ。頭ん中こんがらがってわかんなくなっちまうってよ。こいつは喋れねえってわけでも言葉をわかってねえわけでもねえ、お前らが先に答え言っちまうからビビっちまってんだ」
じゃあな、と建物の中に入っていく凜。今何を言ったんだろう、と飛龍の反応を待つが、何もない。
踵を返して、停めている車に乗り込み、その後はエンジンをかける。いつもならその動作があるのに、今はそうしていない。
「……春蕾、お家帰ったら何したい? 私に教えて?」
目線を合わせるためにしゃがみ込んだ飛龍。
時間をかけて、飛龍の言葉を知っている日本語と照らし合わせて理解する。普段であれば、先に答えを出されて、喋ることなくそれに従っていた。
「……ボク……一緒する……宿題……飛龍……やる……だから……一緒……」
ここへ来て、日本語以外でまともに喋ったのは今が初めて。下手な発音、まともに機能していない文法、単語だけの文章。
「……ええ……ええ、もちろんよ……! 一緒にやろう、春蕾……!」
それでも飛龍は喜んでくれた。抱き締めて、頭を撫でて、褒めてくれる。
「ごめんね……お前の言葉ちゃんと聞いてやれなくて……」
こんな拙い言葉でも飛龍は、上手、と褒めてくれる。
嬉しい、もっと褒めて、僕だけを見て、と飛龍の首に腕を回す。




