pipkにあげたあれを収納したこれ(義親)
pipkとにあげたあれを収納したこれ
※劉夫妻と春蕾の話
三人が仕事で家を空け、ベアトリーチェたちに預ける日でない場合は、この街唯一の中華料理店を経営する夫妻の元に預けられる。飛龍の養父母、劉夫妻が経営しているその店は、この街の掃除屋も兼ねていた。
昼と夜は腹を空かせた労働者が食事を取るためにやってくる。夜中は依頼されたものを掃除して、顧客の要望を叶えるために見せしめを作り出す。
店仕舞いして、訪れた僅かな休憩時間。二人が休日を得ているところは、ここへきてから一度も見たことがなかった。
「蕾、今年は愛に満ち溢れているそうよ。少し積極的になる年ね」
チュンレイだからレイ。カードを見て、飛龍の養母の劉水晶が言った。
恋愛運が気になる、と強請った。趣味で占いを嗜む水晶、だがそれはよく当たる。そのため、食事を取らずに占いだけを求めて店へとやってくる客も多い。
「蕾蕾、どうだ? 好きな女の子の一人でもできたか?」
チュンレイだからレイレイ、愛称で呼ぶのは飛龍の養父である劉紫晶だ。出来上がったばかりの胡麻団子を差し出して、適当に椅子を引っ張ってきてそばに腰掛ける。
「やめなさいよ、紫。この子は龍と相思相愛なのよ。あなたも、ちゃんと分かってるはずよ?」
嗜める水晶の言葉に、反感を示す紫晶。
「男同士で恋愛なんて、そんなの変だ。結婚もできない、子供も作れないんだぞ。それに男同士なんて……異常だ」
親族やらに向ける感情以外を同性に向けることは、紫晶にとっては異常そのもの。この感情は兄弟間のものの延長線だと、若気の至りだと何度も言われた。
「なら女同士ならいいの? それに子供って言ったけど、私もあなたも子供は作れない体なのよ? 忘れたの……あの激しい夜のこと」
「……けれど、恋愛は男女でやるべきだろう」
「あらどうして? 人を好きになるのに、どうして性別が必要なの? それに、親としては、息子たちの幸せを願うべきじゃないかしら?」
飛龍が落ち着きを見せ始めたのは、自分を攫い共にいるようになってからだと、昔は酷く攻撃的で情緒不安定だったと、自分を粗末にしていたと、二人が教えてくれた。
「荒れ果てていた龍の心が救われたのは蕾のおかげよ。とやかく言う権利、私たちにはないわ」
妻には逆らえない紫晶。口を噤んで、持ってきた胡麻団子を口の中に放り込む。だが熱かったのか、咳き込み水を求めてその場を離れていった。
飛龍になにがあったのか、一度だけ聞いたことがある。けれど、二人とも答えをくれたことはない。聞いちゃダメなことだと、それしか答えが得られないのだ。
「さて蕾、他に何か占いたいことはあるかしら?」
「リチャードと、ルチアーノのこと」
「わかったわ。あの二人も、お互い素直になるべきよね」
カードを切り、机の上に並べる。
「……揉め事に諍い……背徳的な行為……恐怖心と過去からの脱却……最後に運命は切り開かれる、ね」
全ての柄を眺めて意味を汲み取る水晶。
「苦悩と困難が二人を直撃するけれど、大丈夫。ちゃんと素直になれるわ」
「ほんと?」
嬉しい、と笑って見せれば、水晶も笑い返してくれる。




