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Confesess 対決 爆弾魔  作者: 蓮時
2/18

第一章 2

現場を去った天美は近くのコンビニを見つけると、電話ブースに近寄った。むろん、競羅に連絡を取るためだ。競羅というのは、朱雀競羅といい、彼女がこの日本で最初に会った女性である。つまり、日本における天美の協力者というべき人物であった。

 数回の呼び出し音のあと、通話がつながると、

「もしもし、誰だい?」

受話器の向こうから、その競羅の声がした。そのバックからは、勇ましい音楽とともに、パチンコ台のジャラジャラ鳴る音がした。

「また、やっているの! こんな大変なこと、起きたときに!」

 天美は、とがめるように声を出した。

「あんたかよ。今、手が離せないのだけどね」

「何、言ってるの! 目の前で、建物、大爆発したの!」 

「爆発ね。それはそれは、今、こっちも爆発中でね。絶好調だよ」

 競羅は上機嫌であった。

「もう! ざく姉、真面目になって。本当に爆発なの!」

「はあ、よく聞こえないよ。店内はうるさいからね」

「だから・・」

 天美が話していると、パトカー、消防車、救急車のサイレンが、次々と聞こえてきた。

 携帯の受話器ごしに、その音を聞いた競羅は真剣になった。彼女は回りに聞こえないように、低い声を出していった。

「これは、実際、大事件が起きたようだね」

「だから言ったでしょ。爆発、目の前で起きたって。例の連続的な」

「おい、本当に、また事件が起きたのかよ!」

「そう、今回は、わったしの目の前で!」

 二人の会話から、爆破事件は初めてでないようである。

「それで、その場所はどこだい?」

「わったしが、たまに行く、高輪のレストラン」

「えっ! あそこが爆破されたのか!」

 競羅のボルテージが上がった。そして、その競羅の声は続いた。

「そっちへ行きたいけど、現場はパトカーや消防車などで大変な状況だろ」

「そう。もう、すごい状態!」

「では、あんたが来な。こっちも、すぐに玉の交換をすまして、家に戻るからね」

「わかった」

 天美がそう答え通話が終わった。


 三十分後、天美は競羅の住んでいるアパートの一室にいた。

 テレビの画面では爆破現場の激しさを生々しく報道していた。

「ほんとに悲惨だね」

 競羅は、ため息をつきながら口を開いた。

「とにかく、許すわけにいかない! 小さい子供たちも、たくさんいたのに」

 天美は、まだ怒りで興奮をしていた。

「けどね、今度の事件は、いつもと違って相手がわからないのだよ」

「そんなことない。わったし、きちんと、顔、覚えてるから」

「覚えている? と、いうことは、あんたは犯人を見たのか?」

 競羅が驚いたような顔をして尋ねた。

「うん。怪しい男、外にいたの。だから・・」

 天美はそう言いながら事件のときの説明を始めた。

 説明を聞き終わった競羅は、ほおをゆるめて言った。

「そうだったのかよ。それなら、今度会ったときは、捕まえることができるね」

「むろん。捕まえる!」

「でも、どこに現れるのか? まではわかるのかい? 警察だって、今度の事件では手を焼いているのだよ」

「それは、警察が、きちんとした捜査、しないからだと思うけど」

「じゃあ、あんたのカンでは、次にどこだと思うのだい?」

「それは、ちょっと、わからないけど」

「結局、あんたも警察と一緒じゃないかよ」

 競羅は舌打ちするように答えたが、思い出したように声を出した。

「そうだ。数弥だったら、詳しいデータを持っているかもしれないね」

「数弥さんね」

 天美も微笑んで声を出した。数弥というのは、野々中数弥と言って、二人と親しい真知新聞の記者である。たいていの事件は、この数弥の協力で解決していた。

「では、連絡を取ってみるよ」

競羅はそう言うと、携帯電話を通話ボタンを押した。

 ところが、いつまでたっても相手はでなかった。競羅は困ったような顔をした。

「つながらないね」

「どうなってるの?」

「さあ、よくわからないね。おそらく、こっちが思うには、この事件の発生を知って、慌てて飛んでいったとき、電話を置き忘れていったのだと思うよ。確か前にも数度、同じようなことがあったからね」

「そうなの」

 天美は不満そうな顔をしていたが、彼女もまた、何か思い出したのか、

「だったら、所長さんに頼めば」

 と声を出した。所長というのは二人の共通の知り合いである私立探偵社の所長、外村御雪のことである。競羅と同年であった。

「えっ! 御雪かい?」

 競羅は困ったような顔をした。天美の扱いに対しては、そりがあわないのだ。

「だって、探偵だし、こういうこと、調べてる可能性あるでしょ」

「あるといえばあるだろうね。あんたに似て事件が好きな奴だからね」

「それなら、聞いてみる価値あるでしょ。ざく姉だって、今まで、どこで事件起きたか、知りたいから、数弥さんにかけようとしたのだし」

天美の言葉に、競羅はしばらく考えていたが、やがて、

「そうだね。数弥がいないから仕方ないか。では、連絡を取ってみるか」

 と言うと、受話器を持ち上げ、通話ボタンを押したのである。

「はい、外村ですけど」

 御雪は数弥と違って、すぐに出た。

「もしもし、御雪かい?」

「その声は競羅さんですね。モニターにお顔が映りませんので、御本人かどうかは確認できませんけれど」

「ああ、何度も言っているだろ。カメラを仕込んだ電話は性に合わないって」

「さようで御座いましたね。それで、本日のお用件は何で御座いましょうか?」

「今日、高輪で、また爆破事件が起きたことを知っているかい?」

「ニュースで拝見しました。今回のは、今まで以上に悲惨なようですね」

「それなら話が早いね、それで、その事件についてだけど」

 競羅の言葉を聞き、御雪の口調が固くなった。

「では、競羅さんの御用件とは、今回の爆破事件のことでしょうか?」

「ああ、その通りだよ。ここんとこ続いている、その連続爆破事件だよ」

「それは、また危険なことです!」

 御雪は危険を強調した。あきらかに事件に首を突っ込みたくない様子である。

「そんなことはわかっているよ。でも、今回はボネッカが巻き込まれたのだよ」

「えっ! あのお子様がですか?」

「ああ。あの店で偶然に食事をしていたようなのだよ」

「それで、大丈夫でしたでしょうか?」

「ちょいと、傷を負ったけどね。今ここで怒っているよ。『犯人を、許せない!』てね」

「わかりました。わたくしでよろしければ力をお貸しします」

「おや、今度は積極的だね」

 競羅の口調が皮肉っぽくなった。

「さようで御座いますか」

「ああ、あの子が事件に関係していると聞いたら、急にやる気になって。こっちは、まだ何も言ってないけどね」

「それは、競羅さんの誤解です。わたくしといたしましても、かように非道な犯人を、野放しにするわけには参りませんので」

「本当に、そういう気持ちならいいけどね」

「競羅さん。そのお言葉、いかような意味でしょうか?」

「別に意味はないよ。それよりあんた、今、事務所にいるのかい?」

「いいえ。仕事のために外出中です」

「そうかい。その仕事は時間がかかるのかい?」

「人捜しですので、なんとも申し上げられませんけれども」

「じゃあ、めどがつくまで動けそうもないね」

「さようで御座いますが、今日は、きりがつきましたから終わりにさせていただきます」

「ははは、そうかい。それなら、もうすぐ事務所に戻るね」

「はい。二時間後なら、お会いできます」

「わかった。二時間後だね。あんたの事務所に行くよ」

「では、お待ちしております」

 そして、競羅は通話を終えた。


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