By Sakashita Hajime[3]
月曜6時の定期更新です
「それでさぁ、自己紹介でもしない?一緒に来たのが一人だけってことはないだろうから、他の人も探してさ!お互い名前くらいは知っといてもいいと思うんだよねぇ」
「そうだな、多分他にも二、三人は来てるだろうから、どうだろう?望月さん」
一番年上だと思われる男がそれに同調し、望月を伺う。
「そうだね、そうしようか。いろいろ教えることもあるだろうし」
そう言って坂下の方を振り向く。
「それでいいですか?」
特に断る理由もないので頷いた。
「はい」
「じゃあ、本部の方には私から報告しておくから、先に他の人呼びがてら施設内の案内してもらってていいかな」
「わかったー」
さっきの若い男が返事をし、望月は頷いて建物の方に向かって小走りで去って行った。
「それで、名前なんて言うの?あ、別に無理に聞きたいわけじゃないから、ニックネームでもいいんだけど」
その台詞に、ハッとした。そう言えば、名前を言っていなかった。
「坂下肇です。本名」
「あぁ、あの五人殺害の。ここに送られてきたからどんな凶悪犯かと思ったけど、あの事件は同情の余地アリな気がするけどねー。そもそも、死刑だったんだ」
「反省が感じられないから、って言う理由だったと思います。それで、四人は名前何なんですか」
「俺は城島聖羅だよ。有名だから知ってるんじゃないかなー?犯行当時未成年の死刑囚」
城島聖羅。ここ五年の中で最も騒がれた犯罪者だ。同級生と教師を合わせて十三人を刺殺したとか。
犯罪の低年齢化に伴って、少年法が改正されたのが八年前。十六歳から成人と同じ刑罰が適用されるようになってからの、初の死刑判決だった。
もう一人話に入っていた男が口を開いた。中肉中背で、普通の穏やかなおじさんといった感じの雰囲気である。
「私は西崎浩二といいます。今のところ、最年長ですね。今年五十一になりますから」
西崎浩二、知らない名だ。とは言え、死刑だろうと有名にはならない事件もある。だが、穏和そうなこの人が死刑になるとは、何があったのだろうか。
「二人ともー。名前くらいは教えたら?」
城島が後ろを向く。ガタイのいい男が一人、こちらを睨みながら言った。
「俺、そいつと口利きたくないから」
「また、そんなこと言ってー。気持ちはわからなくもないけどさぁ。さっきのは望月さんだって悪かったって」
「…」
城島は溜め息を一つ吐いてフォローを入れる。
「ごめんね、悪い奴じゃないんだけどさ。望月さん傾倒してるから、許せなかったんだろうね」
自分で言わないなら僕が言うからねと言い、名前を教えてくれた。
「彼、蒔田佑樹っていうんだ。歳は三十八だったかな。まあ、そのうち仲良くなれると思うよ。後は…」
「江川仁志」
唐突に別の声が入った。声の方を振り向くとずっと黙っていた男がこちらを見ていた。平凡な顔だが坂下より背は高いだろう。
「四十。嫌いなことは無駄なこと。以上」
驚いていると、城島が笑った。
「彼は寡黙なんだ。あんまり喋らないけど、必要なことは話すから困ることはないと思うよー。──もちろんだけど、過去は探らないって言うのが暗黙の了解だからね」
さらりと釘を刺し、西崎に向き直った。
「そろそろ行かないとじゃない?望月さん来るまでに、他の人起こしとかないとね」
「そうだな」
「じゃあ、行こ!行かない人は食堂で待ってて。あ、そうだ」
城島は坂下の方を振り向いた。
「俺だけ年齢言ってなかったね。今年、二十一。もちろん最年少」