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生体機甲 スワロー  作者: 兎川ゆきの&相澤沁
19/22

最悪の再会

スズメ怪人8体との戦闘から2日間が経った。

つばめは戦闘直後に気を失ってしまい、変身したまま眠り続けていた。

青山もまた、ワクチン開発の急ぎすぎから疲労困憊で倒れてしまっていた。

研究員達はワクチンの量産化に取り組んだが、それは一朝一夕に出来る事ではない。

だが、研究員達の働きにより現状では3本のワクチンの矢が新たに作られていた。

この3日間は怪人の出現も無く、静かに時が流れた。

しかし、翌日の早朝、研究所の警報がけたたましく鳴り響いた。

研究所の入り口から1体の黒い怪人が入って来たのだ。

その怪人の体は黒い艶があり、まるで鴉のようだった。

研究所のスタッフ十数名が銃を構え警告したが、黒い怪人は意に介さず、ゆっくりと歩いていた。

歩いていく先には、つばめの部屋がある。

研究員達には発砲の許可が出ており、構えた銃を撃った。

数発は黒い怪人を直撃したが、黒い怪人は研究員達を一睨みしただけで再び歩き出した。

研究員達は完全に威圧され、すくんでしまい、何も出来なくなっていた。

つばめの部屋の扉の前に立った怪人は、以前のようにドアをまるでクッキーでも割るかのように簡単に破ってしまった。

そこに再び大きな銃声が響き、大口径の銃弾が黒い怪人を直撃した。

青山だ。

しかし、以前はこの銃弾でよろめいていたのだが、今回は全く動じない。

怪人は、そのままつばめの眠るベッドまでゆっくりと歩き、鋭い爪をつばめのベッドに突き刺した。

だが、そこにつばめの姿は無かった。

彼女は既に変身して天井で待ち構えていたのだ。

そして、怪人に向かって叫んだ。


「そこの黒いの! アンタ、以前に私の家に来たヤツね!?」

「どうして私に付きまとうのか知らないけど、許さないからね!」

「ついてきなさい!」


彼女は天井から舞い降り、怪人の後頭部を蹴って部屋を飛び出し、そのまま研究所ホールから外へ飛び出した。

怪人は鴉のような甲高い咆哮をあげ、つばめを追って外へ飛び出した。

彼女は空中で怪人と対峙し、怒りに満ちた声で言った。


「よくも隣のおじちゃんを!」

「あの時は逃げちゃったけど、今はもうあの時の私じゃない!」


そう言うが早いか怪人の懐に入り、パンチやキックの連打で攻撃を仕掛けた。

だが、怪人には全く効いていないようだった。

その直後、怪人のパンチが彼女の腹部を直撃し、そのまま地面に叩きつけられた。

動けずにいる彼女を更に蹴り上げ、首を掴み上げて地面に叩きつけ、踏みつけにした。

気を失いかけた彼女の耳に青山の声が響いた。


「つばめ! ワクチンの矢が3本ある!」

「これを使ってくれ!」


青山に気付いた怪人は、彼の方に向き直り、ゆっくりと歩いた。

つばめは満身創痍で、何か所も骨折していたが、なんとか翼を広げて青山に向かって飛び、アーチェリーと矢を受け取った。

だが、腕や指も骨折していてアーチェリーの弦を引くことが出来なかった。

彼女は自分に言い聞かせるように呟いた。


「お父さんなら、こんな時も諦めないよね。」

「矢が撃てないなら・・・直接刺してやるしかない。」


つばめは急上昇し、一気に怪人を目指して急降下した。

その手には矢が握られており、それは怪人の脳天を直撃した。

だが、矢は刺さらずにバラバラに砕けてしまった。

怪人は鴉のような甲高い咆哮を上げ、つばめの首を掴み、研究所の壁に向かって投げつけた。

叩きつけられて地面に落ちる瞬間、つばめは身を翻して急上昇して、今度は怪人の背中をめがけて急降下し、矢を突き立てた。

だが、またしても矢は刺さらずに砕けてしまった。

次の瞬間、怪人はつばめに蹴りを放った。

それは完全につばめを捉え、生体機甲が無ければ致命傷になる程のダメージを与えた。

蹴り飛ばされ、地面を転がって気を失いかけながら、彼女は短い夢を見た。

笑顔の父親が滑り台の上から幼いつばめを呼んでいる。


「ほら、つばめ! 諦めたらこのお菓子はお父さんが食べちゃうぞ!」


彼女はそこで我に返り、怪人に向き直り、最後の矢を構えて地面すれすれを怪人に向かって飛んだ。

そして、怪人の目の前で地面を蹴り、急上昇するように矢を突き立てた。

その矢は怪人の胸にある目のような器官を捉え、深々と突き刺さった。

矢に仕込まれたワクチンは、たちまちのうちに怪人の全身を巡り、その体に変化をもたらした。

鋭い爪のあった手足は人間のそれに戻り、続いて顔が人に戻った。

その顔を見たつばめは言葉を無くした。

彼女の見たその顔は、間違いなく美空一郎、つばめの父親の顔だったのだ。

そして、その顔はわずかに口を開き、人の言葉を発した。


「カエ・・・ッテ・・・・レス・・ト・・・ラ・・・」

「ツ・・・バメ・・・・」


それだけ言って怪人、いや、一郎はこと切れた。

青山は救護班に一郎の火葬と埋葬を指示した。

つばめは、変身を解く事も忘れ、ただただ吼えるように泣いていた。

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