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生体機甲 スワロー  作者: 兎川ゆきの&相澤沁
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アーチェリー

調査班からの連絡に青山は飛び起き、すぐに現地に向かった。

地下研究所の隔壁と良く似たハッチを発見したというのだ。

怪人達はここから出入りしているに違いないのだが、今は開ける事が出来ない。

よしんば開けたとしても調査班と青山だけではどうにもならない。

青山はハッチの座標をレーダーに記録し、調査班と共に帰還した。

自室に戻った彼は、V・C・M開発チームの事を思い出していた。

その頃の黒崎耕三は、強い正義感に溢れ、争いと病気を憎み、使命感に満ちた研究者だった。

V・C・Mの礎となった発見も黒崎によるものだった。

その後は世界中を飛び回り、研究者を指導し、企業からの支援を取り付け、遂にはウィルス性の病気の根絶に成功した。

しかし、当時の黒崎はメディアに顔を一切出さず、病原ウィルスを根絶したのは世界中の研究者であり、彼らが自分のV・C・Mを応用した技術を実用化してくれたおかげだと声明を発表しただけだった。

青山はそっと呟いた。


「黒崎博士、僕は貴方の力になれた事が本当に嬉しかった。」

「心から尊敬していた。」

「なのに・・・・・」


その晩は少しだけ悔し涙を流し、そのまま眠りに就いた。

翌朝、意外な人物から音声通信が入った。

その声の主は黒崎耕三だった。


「久しぶりだねぇ、青山君。」

「君はずいぶんと私の邪魔をしてくれているようだね。」

「私はV・C・Mを使って世界の争いを止めるといったはずだ。」

「だのに、なぜ君は私のしもべ達の行動の妨害をしているのだ?」

「英雄にでもなりたいのかね? それとも、私のように救世主とでも呼ばれたいのかね?」

「1つ、予言をしようじゃないか。」

「君が私の邪魔を続けるなら、そう遠くない未来、世界は滅ぶであろう。」


一方的にこれだけ告げて通信は切れた。

青山は強い怒りを抑えて呟いた。


「黒崎耕三、今のお前は英雄でも救世主でもない。」

「僕とつばめが必ずお前を止める。」


青山は、先ずアーチェリーを完成させる事にした。

ワクチンが出来るまでの間、つばめに訓練を積んでいてもらわなくてはならない。

次の瞬間、レーダーに反応があり、例のハッチの付近を示していた。

彼はつばめと救護班に指示を出した。


「つばめ! 先日と同じ山岳地帯に怪人が現れた。」

「救護班と一緒に急行してくれ。」

「僕はアーチェリーの開発を急がなくてはならない。」

「頼んだよ!」


前回の戦闘でつばめは翼を完全にマスターしており、いつでも自由に空を舞えるようになっていた。

今回のスズメ怪人は7体。

しかし、今のつばめの相手ではなかった。

つばめは拳で怪人の骨を砕いて動きを封じ、檻に運び込み、救護班に渡して研究所に向かって飛び去った。

研究所では、スズメ怪人を火葬にし弔った。

つばめは晴れない表情で呟いた。


「いつまでこの人達を殴らないといけないんだろう。」

「博士、ワクチンを早く完成させて。」


落ち込みながら自室に向かうつばめに青山から呼び出しがあった。

アーチェリーが出来たというのだ。

つばめの表情は一変し、明るい表情で青山の研究室へと走った。

彼女が入って来るなり青山は指示を出した。


「つばめ、これがリクスエトのアーチェリーだ。」

「普通の人間ではこの弦は引けないが、変身した君なら大丈夫だろう。」

「矢は暫定的な物だが、今はこれを使ってくれ。」

「僕はすぐにワクチンの開発に取り掛かるから、出来るまでの間に君はこのアーチェリーで百発百中を出せるように訓練しておいてくれ。」


つばめは待ってましたとばかりに訓練室に入り、アーチェリーの練習を繰り返した。

壁から出てくるゴムボールを射抜く練習を繰り返し、1日でかなり腕を上げた。


地下研究所では、黒崎が愉快そうに呟いていた。


「そうかそうか、よく分かった。」

「青山君、君はどうあっても私に逆らうつもりなのだね。」

「では私も本気でやらせてもらうよ。」

「しかし、この私を本気にさせた君にはご褒美を出さねばなるまい。」

「ご自慢の青い娘も手も足も出ない程のな!」


黒崎は、戦場から調達された兵士の遺体を使って蘇生合成を始めた。

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