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生体機甲 スワロー  作者: 兎川ゆきの&相澤沁
12/22

飛翔

その日、青山はいつになく考え込んでいた。

つばめに次の訓練を命じたものの、どんな事をイメージしてもらえばいいのか分からずにいたのだ。

自力で飛ぶ事などやった事の無い者には、イメージしようが無かった。

つばめと飛ぶイメージについてディスカッションしなきゃならないと考えながら研究室に入ると、訓練室では既に変身したつばめが訓練を始めていた。

それを見て彼は唖然としてつばめに言った。


「つばめ、君は・・・まさか自力で飛ぶイメージあるの?」

「イメージが薄いのにガムシャラにやっても生体機甲は反応しないよ?」


それを聞いてつばめは自信たっぷりに答えた。


「私、飛ぶことについて一晩中考えました。」

「実は私、陸上部で高跳びやってるんです。 それで、コーチによく言われてた事を思い出したんです。」

「空を飛ぶつもりで跳べっていつも言われてたんです。」

「そしたら、一週間で自己ベストを三回も更新したんです!」

「だから、いつもの高跳びの練習で何とかなるかもって!」


青山はつばめの適材さを改めて感じ、彼女に言った。


「つばめ、君は本当に素晴らしい適合者だよ!」

「身体どころか心までこんなにも適合してるなんて思わなかった。」

「生体機甲も君に出会えてきっと喜んでるよ。」

「僕は飛ぶ事については何もイメージ出来ないから、ここは君に任せる。」

「そしたら、僕はレーダーの精度を上げる研究に入らせてもらうね。」


しかし、怪人は訓練やレーダーの完成を待ってはくれない。

市街地にスズメ怪人が確認されたと監視班から連絡が入った。

青山は救護班にスタンバイの指示を出して、つばめと共に現地に向かった。


「つばめ、もし犠牲者が出てた場合、君が救出して救護班に渡してくれ。」

「すまないが、僕は奴らの生体エネルギーをレーダーに直接感知させて調整を完成しなくちゃならないんだ。」


つばめは緊張した面持ちで頷き、いつもの親指立てで返事をした。

現地に着くなり、つばめは車から降りて変身し、青山はレーダーを取り出した。

今回はスズメ怪人が5体で、犠牲者は1人。

この頃には、既に怪人の存在は一般市民にも知れ渡っており、誰もが外出を最小限に抑えていたおかげで犠牲者は少なかった。

スズメ怪人は犠牲者を抱えたまま飛び去ろうとしたが、現れたつばめに驚いたのか身構えた。

つばめに青山から指示が入った。


「まずは捕まってる人の救出が第一だ。」


つばめは頷き、犠牲者を抱えているスズメ怪人に一瞬で近付き、膝を蹴った。

前回同様に怪人の脚は変な方向に折れ曲がり、キーキー鳴いて犠牲者を離した。

つばめは犠牲者を抱き上げ、生存確認しようとしたが、その隙を突かれてしまった。

スズメ怪人は、鋭い爪の生えた手でつばめの首元を後ろから掴み、そのまま空へ舞い上がった。

焦ったつばめは犠牲者を抱きかかえたままだった。

超高層ビル程の高さにまで舞い上がったスズメ怪人は、そこで手を離した。

つばめは犠牲者を抱きかかえたまま落下していった。

このまま地面に激突したら二人とも確実に命は無い。

だが、彼女は落下しながらも考えていた。


「このまま落ちたらこの人は助からない!」

「なんとかしなきゃ!」

「飛べれば! 私も空を飛べれば!」


だが、訓練の出来ていないつばめに翼は無い。

無情にも落下速度は増し、どんどん地面が近づいて来ていた。

青山がもうダメかと目を閉じた時の事だった。

つばめは犠牲者を助けたい一心で必死に叫んだ。


「お願い! 生体機甲! この人を助けて!」

「私を飛ばせて!」

「お願いだから飛ばせてーーーー!」


その叫びに呼応するかのように額のクリスタルが眩しく輝き、つばめの背に大きな翼が出現した。

その翼は力強くはばたき、彼女の体は宙を舞い、滑空して犠牲者と共に無事に地面に降り立った。

彼女はスズメ怪人に向かおうと上を見たが、既に飛び去ってしまっていた。

車から降りて来た青山は喜んで言った。


「つばめ! 今回は誰も犠牲にならずに済んだじゃないか!」

「しかも、君も飛ぶことに成功したし!」

「僕もレーダーの調整がしっかり出来たよ!」

「もうすぐ救護班が来るから、その人を預けて僕たちも帰ろう。」


その直後に救護班が到着し、犠牲者を乗せて送って行った。

つばめは変身を解き、帰りの車に乗った瞬間、よほど疲れたのかすぐに眠ってしまった。

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