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第六話 リーグ優勝決定戦

 シャラクドーム。


 エース高木の再復帰登板と、今日勝てばリーグ優勝が決まるということで、球場内は満員だった。


「ひゃあー、凄い人だな」

「チケットを早めに買っておいてよかったな」


 佐野達は今日も内野指定席のチケットを購入していた。チケットを見せ球場に入ると、混雑した中を通りながら席まで辿りついた。


「今日勝てばリーグ優勝だが……」

「パイソンズ相手だからな、そう簡単には勝たせてくれないだろうな」


 今のリーグ首位はエレファンツだが、その後ろにはパイソンズがいる。今日のゲームを取ればエレファンツの優勝が決まるが、落とせばパイソンズの逆転の可能性が残る。非常に重要な一戦だ。


「とにかく高木に期待しよう」

「昨日、いい顔をしていたからな。やってくれるだろう」


 二人は高木の登場を待った。




 しばらく待つと、エレファンツの選手がアナウンスと共に登場し、守備に着き始めた。高木が登場すると、シャラクドームはひと際盛り上がった。


「やっぱり高木は好かれてるんだな」


 球場の高木に対する期待を込めた雰囲気が、佐野や日野にとっても嬉しかった。


「プレイボール!」


 審判の試合開始の声がかかると高木は投球を開始した。


 高木の初球はど真ん中のストレートだった。ただ、真ん中でも威力が申し分ない剛速球だった。バッターは手が出ず見送った。


 判定は当然ストライク。


「完全に力が戻ってきたみたいだな」

「いや、まだ初回だから注意して見てやろうぜ」


 二人共、目を皿のようにしてピッチングを見ていた。


 二球目は落差が十分なフォークを投じた。ストライクからボールになるコースだったが、バッターは振ってしまい、その結果引っかけた。打球は高木の所に転がって行き、軽快なフィールディングでその球を捌いた高木はアウトを一つ取った。


(……よしいける!)


 そう、高木は手ごたえを感じていた。




 初回は三者凡退の立ち上がりだった。


 その後も復帰一戦目とは見違える安定したピッチングでパイソンズ打線を0点に抑えていった。


 回が進み、五回表。


 スコアは1‐0エレファンツが一点リードしていた。


 高木は三番バッターをセカンドフライに抑え、四番の張田と対峙していた。


「さあ、張田だ」

「今日の高木は張田でも打てないだろう」

「それならいいけどな」


 会話しながら、佐野と日野は真剣な眼差しでマウンドを見ていた。


 ランナーはいない。


 高木はワインドアップから剛速球を投げ込んだ。内角低目いっぱいに決まり、判定はストライク。


「あれを振れるバッターはいないな」


 佐野は見ながらつぶやいた。


 キャッチャーからボールが戻ってくると二球目を投げ込んだ。高木の得意とする落差のあるフォークだ。張田は振ったが、ボールはミットに収まった。


「ひゅ~。凄いな」


 日野は鬼気迫る高木のピッチングを見て、一言そう言った。


 高木の第三球、アウトローへの剛速球。張田は手が出ず見送った。


「ストライーク! バッターアウト!」


 これもコースいっぱいに決まり、張田を三球三振に仕留めた。


(よし!)


 高木は小さくガッツポーズをした。




 試合は1‐0のまま九回表まで進んだ。高木のピッチングは冴え渡ったが、打線の援護は一点止まりだった。


「とうとうここまで来たな」

「ああ、この回を抑えればな」


 佐野と日野も緊張と興奮がない交ぜになった心境で見ていた。


 高木は一人目と二人目のバッターを打ち取ったが、三人目のバッターをわずかなコントロールミスで歩かせてしまった。


 そして張田に再び回ってきた。


(……張田か)


 高木は流石に疲労の色が濃かったが、張田を向かえてそれを忘れたようだった。


 高木の気力を振り絞った投球が始まった。


 一球目。


 インハイの剛速球をミット目がけてぶち込んだ。張田はその球威に驚きややのけ反った。


「ストライーク!」


 球場内に歓声がドッと上がった。佐野達は高木の投球に息をのんでいた。


 第二球。


 アウトコースの剛速球。今度は張田もバットを振ってきた。バットにかろうじて当たり、三塁側へのファールになった。


 三球目を投げる前に高木は二度首を振った。三度目でようやくうなずき投じた球は、再びインハイの剛速球だった。張田はそれを引っ張った。


(!)


 一瞬、高木はやられたかと思ったが、打球は上がらず、痛烈なファーストライナーになった。打球はファーストのミットにがっちりと収まっていた。


「よし!」


 高木は大きくガッツポーズをした。


 球場内に割れんばかりの大歓声が起こった。

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