目覚めと報告、そして偽報
作者のラズライトです。
一度途中で折れてしまったお話を書いていきます。
1から練り直してるので更新速度はうすのろですが、どうぞよろしくお願い致します。
(評価とお気に入りしてくれると跳ねてお祭り騒ぎしちゃうくらい喜びます…よかったらよろしくお願いします)
『ようこそ、西暦450000年担当システムのFIFと申します。ログイン画面は__』
説明とログインを促す機械を無視して身体を起こす。
ここは……自宅だ。代わり映えのない一日が始まってしまったことを後悔しながら、目の前に浮かぶ板に手を合わせる。
ちょっと昔に廃れて、もう一度復活した指紋認証だ。
『指紋認証、静脈認証確認。ログインが完了致しました。身体スキャンを行います。身体スキャン装置へご本人様のIDをかざして下さい。』
毎日毎日、事細かにチェックされるのはこの世界の基本で、欺くのも基本のひとつ。現状どう考えても栄養失調の俺が、このスキャンをそのままでパスするはずが無い。
「何処やったっけ…あぁ、あった。」
掘り返し、かざしたのはダミーのID。スキャンされれば偽装データを返すよう仕込まれた装置で、路地裏とかでログインが出来る裏サイトで容易に手に入る。
代償に、少し金がかかるが。
『認証しました。良い一日を。』
板…ウィンドウが消える。腕時計の形のデバイス、プライバシー保護のデジタルフェイスシールド、その他仕事に必要な鞄を握ってドアを開けた。
ぱしゅん、なんて可愛い音のようなものを立ててドアは閉まる。
さぁ、優しい優しい世界へ、また俺は足を踏み出す。
「お兄さん顔色悪いね!ドリンク、買ってあげようか?」
「ちょっとそこのあんた、大丈夫?」
「悩みがあるなら聞くよ。」
ぐだぐだうだうだ。この会話は全て通勤中の話だ。
フェイスシールドの劣化か、俺の内部の顔が薄く映っていたらしい。かつてあった痴漢のような扱いこそされないものの、それはまぁ、大事に心配される。
これが昔の人類が望んだ、優しい世界。
人が人に優しくて、倫理的で、道徳的な世界。
___本当に?
内側の俺の声は、まだ、知らぬ振りをして足を早める。
雑踏が此方を睨むような、見詰めるような、見守るような、そんな目線を蹴って誤魔化す。
この世界は、関わられるのが苦手な人間にとって地獄だ。自殺しようものなら保護され、道徳心から説教に包まれて窒息死。
完成するのが、今みたいなヘラヘラ笑った人間たちだ。
「…おはようございます」
俺が呟くように挨拶をする。表向き笑顔に。中は無表情。
「おはよー」「元気ないね?」「大丈夫?」「おはようございます!」
口々に帰ってくる返事に平気だのなんだのを返しつつ、デスクにたどり着く。
その道のりだけでも、かなり、苦痛だ。
「おはよう。今日の仕事は、これと…」
書類を任され、漸く1人で落ち着いて仕事ができる。
なんて事がある訳が無い。
俺のフェイスシールド型マスクが劣化しているから、中の顔色が悪いのも少し透けて見えるらしい。それを逃すような道徳なんてここには無く。
「…ねぇ、大丈夫?帰ってもいいよ、私、この仕事できるから。」
ほら来た。
「あぁ…じゃあ、お願いします。ご迷惑お掛けしてすみません。」
俺が受け取らないと受け取るまで続く応答。それは面倒だから、大人しく帰ることとする。
散歩がてら。
「き、気を付けてね!」
「うん、ありがとうございます。すみません。」
とぼとぼ、なんて。ゆっくり歩いて、電車に乗る。
角の取れたデザインで、どことなく新幹線のような丸い形をした電車。電動だったか?なんしか、クリーンエネルギーな事に間違いは無い。
『次はA01地区です。降りられるお客様は、電車が止まってから、ゆっくり降りるようお願い申し上げます。』
原初の地区と呼ばれるここは、大きな木とそれに呑まれるようなビルがある。それ以外は緑地になっていて、公園のような様相をしていた。
人は、居ない。原初の地区は発展に向かなかったのだ。
管理ビルが記念エリアとして保護されているだけで、ベンチしかない。居るのは暇な老夫婦や、こんな世界で家から逃げた咎人だけ。…なんて、習った気がする。咎人って、そんな大袈裟な。当時はそう思ったけれど、今でこそ思う。
「俺がそっち側なんだよな。」
ビルに足を踏み入れる。倒壊しない程度に手入れされているだけの、今には珍しい簡素なビル。
[Hello?]
突如聞こえた機械の声。
持ち主は、確実に此方を見つめていた。




