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いかれたベイビー  作者: 森山孝明
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日曜日の朝

僕は自宅のベッドが好きだ。サイズはセミダブルがいちばん落ち着く。慣れていないベッドだとなんとなく安心出来ない。例えば・・・、そうだな、例えば、ホテルで女の子と過ごすときは自分で無くなるときがある。少し照明を落とした密室で、いつもと違うベッド、裸の人間と向かい合っていると、別の誰かになったような気がしてくる。そして、そんなときは、だんだん思考が薄くなり、目の前の「ニオイの強い食べ物」を「食べたい」という気持ちになってくる。


そのときは、自分のことをサディストか何かだと思っている訳だが、あとでよくよく思い出してみれば、『えっと、・・・あれはまるで鮫だったな』ということになる。魚はなまぐさい。だから、なんというか、ちょっと嫌な気分になる。


僕のベッドには濃紺色のシーツが掛けてある。5月になったら緑色のシーツに変えたいと思っているのだが、好みの色合いのシーツが見つかっていない。「通販で買うしかないかなぁ」と思っている。


先月には雪が降った。3月に雪が降るのは7年振りだとニュースで言っていた。雪が降った日は、僕はそれを窓越しに見ながら酒を飲んだ。晴れたら晴れたで、晴れた日の暖かさを窓越しに感じながら酒を飲んだ。暖かいと言っても「雪の降る3月にしては」ということだ。あまり出掛けなかったので、よく酒を飲んだ。


今月は変わって暖かい。今日も暖かいようだった。だから、出掛けようと思っていた。

休日の朝、僕は割と早起きをする。昨夜は寝るのが遅かったのだが、今朝、6時には目が覚めた。シャワーを浴び、昨日コンビニで買って食べなかったパンをオーブントースターで温めてかじった。普段と違う朝を迎えると、物足りなかったりする。部屋はメロンパンの香りでいっぱいだったが、さっきまで、僕はずっと『カツカレーを食べたいなぁ』なんて考えて居た。朝にシャワーを浴びると調子が狂ってしまうのかも知れない。

先週買ったばかりのジーンズに足を突っ込み、お気に入りのセーターを着た。セーターから、ロングピースと柑橘系の香水の匂いがする。『素敵に街を歩けそうだ』『何処に行こうかなぁ』なんて考えながらコートを羽織ろうとしたとき、急に『やっぱりベッドで横になりたい』と思ったのだ。


例えば、ホテルのベッドは落ち着かない。コートを羽織ろうとしたとき、ちらっとベッドを見たのだ、濃紺色のシーツの、いつものベッドを。僕は、昨夜のことを思い出した。


コートを脱ぎ、ベッドに横になってみた。セーターが毛玉だらけになってしまうかも知れないが、それは別に構わなかった。


目を閉じて、昨夜のことを、ゆっくりと思い出してみる。僕は、普段は香水をつけない。静かに呼吸をしていると、時々、柑橘系の香水の匂いがした。日曜日の朝にはバナナの香りの方が似合いそうな気がした。

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