16話 昇級と討伐隊参加要請
「皆さんおめでとうございます。今回の依頼達成で、冒険者レベル並びにランク共にCへの昇級を認めます!」
受付嬢の言葉に三人は、ヘナヘナと床にしゃがみ込んでしまった。
「やった……やりましたよ、アクア様! わたしたち、やっとCになれましたよ!」
「まさかCになれるなんてな……私はまだ夢を見ているようだ」
「これでようやく、アタシも一歩前に進めた気がするネ」
彼女たちは涙を流して喜びあっている。
そんな彼女たちの姿を見る俺も、なんだか感慨深い。
今回の冒険者ランク昇級試験は、街の中にある迷宮、十五階層から『真珠草』の採取する事。
初めて迷宮に入った割には、彼女たちの活躍は目を見張るものがあった。
特にヤオの活躍があったからこそ、依頼を難なく達成できたといっても過言じゃない。
「……Dランク冒険者がたった半日で昇級試験をクリアするなんて、前代未聞ですよ?」
「そう……なんですか?」
受付嬢にそう言われても、三人はその成果に実感が湧かないみたいだ。
「……もっと自信持っていいんですけど……あ、そうそう。これだけの実力をお持ちなら、是非討伐隊に参加してみませんか?」
「……討伐隊?」
「はい。本の少し前に情報が入ったんですが……ガルファ山脈から双龍が現れたって。それでランクB以上の冒険者たちで急遽討伐隊が結成される事になったんです」
双龍か。
炎を纏った真紅のドラゴンと氷の鱗をした蒼いドラゴン。
数百年ごとに目覚めては大陸を移動するんだが、これが何とも厄介なんだ。
視界に入る物全て破壊し、ドラゴンが通った後には国や街は滅ぶと、昔の文献に記載されている。
「そんな危険なドラゴンに、俺たちなんて参加出来ないんじゃないのか?」
「本来なら参加させないですね。でも、皆さんのここ最近の実績や迷宮からの帰還の速さを鑑みてですね……是非、ギルドから参加要請をさせてほしいんですが……どうでしょう?」
「……三人はどうしたい?」
今の俺たちでも危険な相手になるかも知れない。
できればもう少し実績を積んでからのほうが良いんじゃないかと思う。
「危険なドラゴン……わたしは是非その討伐隊に参加したいです!」
「ああ。ドラゴンとなれば、そうそう出会う機会のない上位種の魔物だ。経験を積むにはまさにいい機会じゃないか」
「そうネ。ドラゴン退治はアタシの長年の夢だったヨ! 超危険なドラゴンが相手なら、尚更ネ!」
「みんな……」
彼女たちは少しも悩むどころか、やる気マンマンじゃないか。
俺がいろいろ考えるなんて、余計なお世話だったみたいだったな。
もし仮に彼女たちが危険に晒される事になれば、俺が全力で守ってやるさ。
「……と言う訳だ。参加するのに問題ないよ」
「了解です。では、今ギルド三階の会議室で討伐隊に参加する冒険者たちが集まってますから、皆さんもそこに参加お願いします」
受付嬢に言われて、俺たちはギルド三階の会議室へと向かう。
三階のドアを開けた先には、大勢の冒険者たちがひしめき合っていた。
「ふわぁ……なんかピリピリとした空気ですね」
「ああ、場の空気が張り詰めているな」
「みんな、怖い顔してるネ。もっとリラックスが必要ヨ」
ここにいる連中って、百戦錬磨のような風貌の連中ばかりじゃないか。
結構有名な冒険者の姿もそこら中にいる。
俺はその中でリノア達のパーティの姿を見つけてしまう。
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