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15話 打ち上げと昇級クエストの提案

「さ、これが今回の報酬だそうだ」


 クラーケン討伐の達成。

 ギルドに戻った俺は早速、依頼達成の報告し報酬を受け取るとすぐに地下酒場へと向かった。


 テーブルに座った彼女たち三人の前に、俺は四当分した金貨の入った袋をテーブルの上に置く。


「……ほ、本当に貰ってもいいのか、アクア」

「当然だろ、シノン。今回の依頼は俺たち全員で達成したんだからな」


 報酬の多さに彼女たちは少し戸惑っているようだ。

 今までのランクCとは違い、ランクBの報酬は多くなる。


「……じゃあ本当に貰いますよ? あとで返せとか言わないでくださいね?」


「そんな事、アクアなら言わないネ。そうだヨネ?」


「あはは。そんな事言わないからさ。三人の実力で勝ち取った報酬だから、胸を張って受け取ったらいいさ」


 三人は互いに頷くと、それぞれ報酬を受け取って嬉しそうな表情へと変わった。


「それじゃあ、今回の依頼達成を祝して、ちょっとした打ち上げを始めよう!」


「はい、アクア様!」

「じゃんじゃん食べるネ! 料理をどんどん持ってくるネ!」

「あ……えっと、お酒を頼んでもいいだろうか、アクア」


 俺はウエイトレスに料理と酒を注文する。

 数分後、テーブルの上には隙間が無いくらいに大量の料理が並べられた。


 その光景に彼女たちの目が爛々と輝いている。


「それじゃあ……ランクBクエスト達成を祝して、かんぱーい!」


「「おおー!」」


 ちょっと掛け声が違ったが、彼女たちは料理に手を出し始めた。


 シノンと俺はジョッキをぶつけて、エールを一気に飲み干した。


「ああ〜……勝利の酒は格別だ。今まで飲んだ中で一番美味しいなぁ」


「実は俺もだ。こんな酒が美味(うま)く感じたのは初めてかもしれないな」


「……あの、お酒ってそんなに美味しいんですか?」


 料理をもぐもぐと食べていたディスティニィが手を止めて、不思議そうに聞いてきた。


「まあ、美味しくはあるけど……ディスティニィは飲んだ事ないのか?」


「はい。わたしはまだ十六なので、お酒は禁止ってお婆様に言われているんです」


 彼女は少し残念そうに呟いた。


「……え、ディスティニィってもう十六なのか!?」

「はい、そうですよ?」


 キョトンとした顔で俺を見ているディスティニィ。


 俺は彼女の年齢に驚く。

 幼そうには見えたけど、まさか十六歳だったとは……


「……アタシは十八だからネ。子供じゃないヨ」


 言ってヤオを俺を睨んでいる。


「……となると、シノンさんも見た目より年齢が」


 俺とヤオ、ディスティニィの視線が、シノンに向けられた。


「……私は二十三……歳です」


 シノンは俺たちから目を逸らして小さく呟いた。


「――それで、アクアは何歳ネ? まさかアタシたちより年下なんて事はないよネ?」


「う……なんで興味深々そうに俺を見ているんだよ、三人共」


「だって、興味ありますからねぇ〜」

「そうネ。アタシたちはアクアの歳に興味ありありネ」

「うんうん。私より年上でお願い」


「あー……えっと、俺は今年で二十歳になるんだよ」


 おお、と感嘆の声が二人から上がった。

 シノンだけは他の二人と違って、落胆しているように見えるが。


「そうだ。俺が年上だからって、急に敬語なんて使わなくてもいいからな? そう言うのは苦手なんだよ、俺」


「何を言うか、アクア。アタシたちはもう立派な仲間だから、今更喋り方を変えるつもりは無いネ」


「ヤオの言う通りですけど……わたしはアクア様を尊敬してますから、今までどおり今の喋り方をさせて貰いますけどね」


「ま、そう言う事だ。アクアも私が年上だからって、遠慮なんてしなくてもいいからな?」


「それはまた別じゃないネ、シノン」

「そうそう。シノンさんは年長なんだから、ちゃんと敬語で――」

「だから、そう言うのは辞めて! 私も普通に接してよ!」


 からかう二人に、シノンは本当に嫌そうな表情をしている。


 俺はそのやり取りを見て、思わず大きな声を出して笑ってしまった。

 周囲の人が達が驚いて見ているにもかかわらずだ。


 たぶんこんなに心から笑ったのは、冒険者になって初めてかもしれない。


「アクア様?」


「いや、すまない。三人のやり取りが面白くてな、つい……お前たちとパーティを組んで、本当に良かったよ、俺は」


 前のパーティじゃ感じ取れなかったこの感覚。

 信頼関係で築かれたこの感覚が、本来のパーティと言うものなのかも知れない。


「何言ってるんだ、アクア」

「うん、お礼を言うのはアタシたちヨ」

「ですよ、アクア様。ここまで強くなれたのは、アクア様のお陰なんですからね」


 彼女たちの称賛の言葉は、毎回俺の心に刺さる。

 こいつらのためなら、俺は次もそのまた次も頑張れるはずだ。


「……なあ、冒険者ランクの昇級クエストを受けてみる気はないか?」


「昇級クエスト!? もちろん受けたいに決まってます!」


 最初にテーブル越しに身を乗り出したのはディスティニィだ。

 彼女からは並々ならない意思を感じた。


「もちろん受けようじゃないか!」

「いつでも準備オッケーネ!」


 続いて、シノンとヤオも立ち上がった。

 二人からも強い意思を感じる。


 俺の提案に彼女たちはやる気が刺激されたようだ。


「それじゃあ決定だな。明日、ギルドに集合したら早速昇級クエストの申し込みをしよう!」


「おお〜!」


 俺たちの決意の叫びが酒場中に響きわたった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


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よろしくお願いいたします!

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