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13話 新しい依頼

 パーティ結成から数日が経っていた。

 俺たちはギルドの依頼掲示板の前に集まっている。


「なぁ、そろそろもうワンランク上の依頼を受けてみないか?」


「……ワンランク上の依頼、ですか?」

「それはつまり、ランクBの依頼と言う事か」

「急にどうしたネ、アクア?」


 少し困惑したかのような三人は、互いに顔を見合わせてそれぞれ何かを考えている。


「いやな。三人の実力的には、ランクBのクエストでも大丈夫じゃないかって俺は考えてるんだ」


 この数日間は、彼女たちでも受けれそうな格上ランクCの依頼を何度か挑戦させた。


 戦いに不慣れな彼女たちに、戦い方を身につかせるために実行していたんだが、元々素質があったんだろう。

 彼女達の成長は予想以上に速くて、俺は驚いた。


 さらなる経験の上積みするためにも、早めにランクBの依頼にも慣れて貰いたいと、俺は考えたのだ。


「なるほどネ……それはいい提案ネ。アタシも弱い敵には、そろそろ飽きて来たところネ」

「同感だ。私の盾捌きが上の敵に通じるか、知りたくなってきたところだしな」


「と、言うわけで、アクア様。わたし達はその提案に賛成です!」


 彼女たちのやる気を感じさせる表情に、俺は嬉しくなった。


「それでどれにするネ?」

「……そうだなぁ」


 俺は掲示板に視線を向けた。


 依頼書は難易度DからSに分類されている。

 難易度が高くても、依頼内容が簡単なのは人気ですぐに無くなる傾向がある。


 今回はランクBの依頼の中から俺は一枚を剥ぎ取った。


「今回はこれだな」


 シノンが依頼書に目を通す。


「ノルディア湖の……クラーケンの討伐依頼?」


 シノンが難しい表情をした。


 今回俺が選んだのは、ノルディア湖に出没するクラーケンの討伐。

 ランクBのクエストの中でも、割と難易度が高い依頼だ。


「クラーケンですか? それは流石に早くないでしょうか?」


「そうか? 俺はもう大丈夫だと思うんだが……不安か?」


 不安そうな顔をして、三人はウンウンと何度も頷いている。


「湖と言うことは、私たちの足場は船上のみとなる。そうなると戦える範囲も狭まるし、船が壊されでもしたら……私はカナヅチなので、溺れてしまうよ」


 シノンは小さく呟いて、沈んだ表情をさせ下を向いた。


「……船は酔うから苦手ネ。どうか他の依頼に替えて欲しいヨ」


 ヤオは俺の胸ぐらを掴んで必死に訴えてくる。


「えっと、ディスティニィも船酔いとかカナヅチだったりするのか?」


「いえ。わたしは泳ぎも船も大好きです……ただ、ぬるぬるしてる物が苦手で……えへへ」


 ディスティニィは困ったように笑っている。


「カナヅチに、船酔いに……ぬるぬる苦手か。う〜ん……」


 通常であれば大型の船を借りて、足場の広い甲板上で戦うのがセオリーだ。

 ただクラーケンの一撃は強力で、船底に穴を開けられると沈没する可能性もある。


 ランクBのクエストだから、それくらいの難易度は覚悟してもらわないとなんだが……


 依頼の危険性とそれぞれ彼女たちが抱える問題を考えれば、不安になるのも無理はないな。


「……でもですね。わたし達にはアクア様がいるから、それほど不安じゃないんですよ。ぬるぬるはちょっと問題ありますけど……」


「ああ。君ならカナヅチも何とかしてくれるよな? な!?」


「船酔いだけ解決すれば、アタシはクラーケンなんか相手じゃないネ! だから船酔いもどうにかして欲しいヨ」


 彼女たちは本当不安なんだろうが、俺を信じてくれている。

 ならば、彼女たちの期待に俺は全力で応えてやるだけだ。


「よし、三人の不安材料は俺が湖に着くまでに、何とかしてやるよ。だから、この依頼を受けても問題ないな?」


 三人は満面の笑顔で力強く頷いた。


 俺は受付にクラーケン討伐の依頼を受理してもらう。

 一応、冒険者ランクSだから、俺がランクBの依頼を受ける事自体は何も問題はない。


 依頼を受けると俺たちは、西門の入り口で幌馬車に乗り込んで出発する。

 目指すノルディア湖まで、馬車で一日の距離だ。


 揺れる馬車の中で、三人はどこかソワソワしている。


「ふんふふんふ〜」


「鼻歌ってずいぶんと機嫌がいいな、ディスティニィ」


「ええ。この街に来て初めての遠出ですからね。気分も乗ってきますよ」


 彼女は腰の袋からクッキーを一枚取り出して、パクリと齧った。


「あ、アクア様も食べますか? これ美味しいですよ」


 ディスティニィはそう言って、甘いクッキーを俺の口に突っ込んだ。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


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よろしくお願いいたします!

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