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12話 真の実力

 さて、ディスティニィ、ヤオ、シノンの三人には一級品と同等の防具や武器を提供した。


 それだけでも十分なんだが、やはり基本をどうかしなければ、問題は解決しないだろう。


 だから俺は彼女たちに、ある物を渡す事にした。


「アクア様、これは何ですか?」


 三人は自分の手のひらにある錠剤を不思議そうに見つめている。


「基礎値を上げる薬ってところかな」


「基礎値?」


 三人はキョトンしたまま揃って首を捻った。


 これを飲めば、今まで足りなかった身体能力を補ってくれると、例の本に記載されていた。

 この薬を服用すれば、彼女たちの目覚めていない身体能力を覚醒してくれるはずだ。


「ふむ。君がそう言うのなら、私はそれを信じよう」

「そうネ。ここまで来たらアクアを信じるしか無いネ」

「ですね。じゃあ、遠慮なく、このお薬をいただきますね」


 彼女たちはそう言うと、錠剤をぐっと飲み込んだ。


 見た目は変わった様子はないが、薬の効果はすぐに出ると思う。

 なので、ここは依頼を一つ受けて彼女たちがどう変わったのかを試す必要がある。


「となるとだ……よし、これがいいな」


 掲示板から一枚の依頼書を剥ぎ取ると、彼女たちの前に突き出す。


「ホワイトウルフ十頭の討伐クエストだ。これなら三人の力がどこまで上がったのか確認できると思うんだが……どうかな?」


「……ふむ。小型猪(リトル・ボア)よりも格上の敵を相手にする方が、私達の実力を測るのには丁度いいと言う訳か。なるほど、なかなか理にかなっているな」


 シノンが最初にその提案に乗ってくれた。

 二人も続くように提案に頷いている。


 早速受付嬢に依頼を受理してもらうと、俺たちはその足でギルドを出た。


 目指す場所は北側にある森林地域。

 俺とディスティニィが初めて出会った場所だ。



 ○



 ギルドを出発して数十分後に森林地域に辿り着いた。

 森に入ると、すぐにホワイトウルフ十頭の群れを発見した。


 ホワイトウルフはその名の通り、真っ白な毛を持つ狼型の魔物だ。

 凶暴性は小型猪よりも高く、俊敏な動きで敵を翻弄し群れで一斉に襲いかかってくる習性がある。


 本来なら冒険者レベルDの三人には手強い相手だろうが、今の彼女たちならそれほど問題は無いと、俺は確信しているのだ。


「ま、やばくなったら俺が助けに入るから、まずは三人で戦ってくれ」


「「はい」」


 気合いの入った返事すると、三人はホワイトウルフに群れへと近づいていく。


 盾を構えたシノンが先頭に立ち群れに突進する。


「さあ、掛かってきなさい!」


 昨日と同じように彼女は盾を叩き鳴らし、敵の注意を集めている。


 ホワイトウルフがウウっと唸りを上げ、十頭が同時にシノンに向かって襲いかかってきた。


「無駄だ!」


 ――がんっ!


「ギャン!?」


 十頭もいるホワイトウルフを、シノンは見事な盾捌きで次から次へと連続して高く空に跳ね上げる。


「――今よ、ヤオ!」

「了解ネ!」


 間髪入れず、ヤオがシノンの背中を駆け上がり跳躍した。


「はあああ!」


 ――ザシャ!


 彼女が繰り出す鉤爪の真空波攻撃で、空中に舞うホワイトウルフ達の体を引き裂く。


「ディスティニィの番ヨ!」

「はい、ヤオ!」


 ヤオが落下していくのを見計らったように、ディスティニィが手にした杖から炎が噴射する。

 その炎はまるでドラゴンが吐くブレスのように。


 ――ゴウっ!


 唸りを上げた炎が引き裂かれたホワイトウルフ達を焼き払う。

 灰になった残骸がブスブスと燻りながら、地上に降り注いでいる。


「や、やりましたよ! シノンさん! ヤオ!」

「ああ、ついに自分達の力で魔物を倒す事ができたな!」

「アタシ、感激ネ! やっとやっと……うぅ」


 三人は互いに抱き合って喜んでいる。

 そんな彼女達を見ていると俺は心が満たされていく気分だ。


 最初はどうなるかと思っていたが、狙い通りになってよかったと思う。


 シノンは防御力、ヤオはスピード、ディスティニィは魔力。

 それぞれ足りなかった部分を、薬が上手く補ってくれたようだ。


「アクア様!」


 俺の名前を呼びながら、三人が駆け寄ってきた。


「お? どうした?」


 俺の前にディスティニィ、シノン、ヤオの三人が並んで立っている。


「本当にありがとうございます! アクア様が居なかったら、わたし達冒険者なんて無理だったと思います」


 言って、ディスティニィと他の二人は深々と頭を下げた。


「いや、感謝するのは俺の方だ。正直、俺は三人は全くダメだと思ってたからな。

 でも、三人は俺を信じてくれたし、思った以上の成果を出してくれた。

 だから俺から礼を言わせてくれ! ディスティニィ、シノン、ヤオ……ありがとう!」


 俺は彼女達に向けて、心から感謝の言葉が自然と出ていた。

 もちろん嘘偽りなんてない。


「アクア様……感謝するのはわたし達の方なんですよ? アクア様が感謝したら、困ってしまいます」


 ディスティニィは悪戯ぽくクスッと笑った。


「この結果は君のおかげだ、アクア。聖騎士でありながらランクの低い私をパーティに入れてくれた恩は一生忘れない」


 言うシノンの瞳に溜まった涙を指で拭った。


「アクアが信じたように、アタシ達もアクアを信じた結果ネ。恩はどんな事をしてでも返せ……アタシの村に伝わる言葉ヨ。だから、アタシはアクアのためなら何でもするネ」


 ヤオはどこか誇らしげな顔して、俺に笑って見せた。


 今日得た勝利の事は、俺は一生忘れる事はないだろう。

 たぶんいろんな困難な壁にもぶち当たるはずだ。


 だけど、ディスティニィ達となら乗り越えて行けると、俺は確信できる。


「――さ、街に戻って依頼完了の報告をしよう!」


「「おー!!」」


ここまで読んでいただきありがとうございます。


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よろしくお願いいたします!

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