4.ロランの来訪
それにしても、アリアさんでも止められなかったというのに、ロランが止められたのは不思議ではある。魔法というのが予想としてはあるが、その効果がどのようなものかまでは予想がつかない。実際、自分の目で見たわけでもないから仕方ないことではあるけど。
たとえロランにはぐらかされることになったとしても、俺たちの世界の道具の知識なんかを教えることを対価にすれば、ほとんどのことはなんとか出来るだろう。
あんな風に貴族たちがこぞって俺たちのところに来たことだって、たぶん俺たちの知識を上手く手に入れて、力を手に入れようと考えているのだろう。その理論でいくとロランにもこれは通じるはずだ。何か目的がありそうだということを仄めかすような発言も彼からはあったので、真意は掴めないが、見込みはあるし、協力者であるロランの本心くらいは知っておきたい。
今後の方針はみんなとも話し合う必要があるが、ある程度は自分の頭の中で固まった。
ロランの真意を掴むこと。もう一つは勝負を受けた目的でもある、みんなの戦力を高めることの二つだ。
一つ目のはさっき考えた通りだし、もう一つは、六ヶ月後にあるという戦いに備えるため。知識だけが必要なだけではなく、純粋な力を試されないとも限らないからだ。
おっと、考えてる間にみんな来たみたいだな。
「いやーぁ、生きててよかったね、カイトくん?」
「そんな、楽しそうな雰囲気で言われても嫌な気分になるだけですよ……」
俺は声の主から顔を逸らしつつ、そう答えた。
「そもそもなんであなたここに来てるんですか……?」
「ハルカちゃんが呼んできたからね、来ないわけにはいかないだろう?」
ロランはそう得意げな顔で言っていたが、一発目の物言いがもはや煽っているようにしか聞こえない。
「とは、言ってみたけど、本当は協力相手である君に死なれてはたまらないからね。君とアストル君を引き合わせてしまったのは、僕に責任の一端があると思う。だから、お詫びをしようと思って、先に来たんだ。君の仲間たちよりもね。どうだろうか。君が今知りたいことをなんでも一つだけ教えてあげるというのは?」
願ってもないことではある。傷も治り、体にも異常がない以上、俺にこのお詫びと称した提案を受け入れない理由もないが、こうもタイミングよく言われるとどういうことだろうかとついつい勘ぐってしまう。
聞くとしたら、さっきの一つ目の方針だけど……。




