6.ミーシャの変貌
コンコンコンとノックする音がして、扉がゆっくりと開けられた。
「ご歓談中失礼致します。ミーシャ様をお連れいたしました」
ロランはアリアさんが来ていなかったことにかなりの衝撃を受けていたようで、
「えっ、僕、アリアも連れて来るように言わなかったっけ?」
声にはかなりの怒気が含まれていて、かなりの威圧が辺りに満ちてきた。
「ひっ、ア、アリア様は不届き者の気配がすると言って、始末したら戻ると言っておられましたっ」
「へぇ、アリアがねぇ、珍しいこともあるもんだ」
ロランは少しの間何かを考えているようだったが、しばらくすると俺とミーシャの方を見て、
「すまなかった。アリアが僕が呼んでも来ないことなんて今までになくてね。つい、いつもは隠している魔力が漏れ出してしまったよ」
俺はロランがその威圧を収めた後でも、しばらくの間動くことが出来なかったが、ミーシャは平然とした様子で、
「えらくメイド想いの侯爵様なんだねー。もちろんそれはいいことだと思うけどね。上に立つ人間としては、一人の人間にあまり入れ込みすぎるのはよくないと思わない?それにその魔力は少し危ないよ。まるであと数回何か辛いこと、嫌なこと、苦しいことがあったら壊れてしまいそうな……」
「何が言いたい、エルフの小娘!」
「いくら侯爵と言えども、人を小娘呼ばわりするのはどうかなぁ。私はあなたよりは間違いなく長生きのはずだよ。百年前の大戦の時には人間はそこかしこに潜んでいるような弱い生き物だったというのに。数が増えたくらいで粋がるなよ、人間風情が。これ以上あなたが壊れれば、私はカイトくんを逃す」
そんなことを突然に言い出したミーシャをロランは今までにないほど鋭い目つきで睨みつけていた。
「それだけはやめろという顔だね。あなたがどんな闇を抱えているのか、私は興味もないし、助けるつもりなんか一欠片もない。でも、あなたがカイトくんの味方で、これ以上壊れない限りはあなたの味方をしてあげる」
ロランにそう言い放ったミーシャは、初めて会ったときとは全く真逆のミーシャの態度に呆然としていた俺に向けて、
「じゃあ、カイトくん。アリアさんが戻って来るまで楽しく話そうよ。もちろん、戻ってきたら明日の話をしよっか」




