30.左の道
俺たちはブルードに連れてきてもらった道を30分ほど進んでいた。
「結構進んだよね。分かれ道ってまだなのかな。」
後ろから、遥香の心なしか震えた声が聞こえてきた。
所々に申し訳程度にしか明かりがつけられていないので、はっきりと前が視認できないからだろう。
確かに、30分も暗闇の中にいるのはなかなかに堪えるものがあった。
本当に合っているのかと不安になるんだ。
一本道であったとしても。
「信じて進むしかないんじゃないか?先は確かめられなかったんだし。」
流石にほとんどなんの情報もない中で推測するのは流石に無理だからな。
そんなことを考えつつ、先に進んでいく。
それから、数百メートルくらい歩いただろうか。ようやく分かれ道らしき影が眼界に入ってきた。
「はぁーっ。やっとかあ。」
そういった安堵の声が後方から聞こえてくる。
「右って言ってたよな?」
なんとなく不安になったので、念のためにみんなに確認をとった。
「確か右だよー。」
呑気に聞こえた愛蘭の声が今の俺には気持ちよく感じられた。
そうして、右に歩いていくと、とてもまばゆい光が差し込んでいる場所につながっていた。
「おっ、やっときたね。」
そう言ったのは、待ち構えていたロランだった。
「いやーぁ、ちょっと遅いから心配したんだけど、上手く認められたようだね。その様子からしても大丈夫そうだ。さ、帰ってきてすぐで悪いんだけど、そろそろ時間だし、王城に戻ろうか。」
ロランは俺たちがやってきた方へ向かって、歩いていく。
「なんでそっちなんだ?」
神崎がそう尋ねると、
「ああ、君たちが曲がったのは右だっただろう?そこを右に曲がるんだよ。そっちのほうが早いからね。」
どれだけ手薄で粗雑な体制なんだ、王城の建築体制は。
穴ぐらい開けられたら、流石に気づきそうなものだが。
「ちなみに僕はいつもそっちを使ってるよ。まぁ、バレても大丈夫だと思うよ。」
そう言って、ロランは穴に入っていった。
〜アリア視点〜
貧民街のの守護者と聞いて、なぜあの時、私を守ってくれなかったのかという感情が、心の底から湧き上がっていた。
さっきはその衝撃で一撃もらってしまったが、次は無理だ。
受けるとしても、致命傷だけは避けなければ・・・
私が得意な風魔法を発動させる。
自分が使うのに詠唱も必要としないし、私の戦闘スタイルに合わせるのに一番適しているからだ。
「追風」
「舞風」
「さあ、いきますよっ!」
そんな宣言に守護者は無言で応じた。
先程よりも早さを増した剣戟の応酬。
ときおり煌く短剣と風を切る音以外にその戦闘を示すものは何もない。
斬り合うたびに薄皮が少しずつ削られていく。
私はこの状況に少し興奮を覚えていた。
私が襲う相手はいつも私に一撃で仕留められる。
でも、今日の相手はいつもとは一味違った。
私が魔法を使う程に強敵だと感じた。
こんなことは初めてだった。
だんだんと、私たちが纏う空気が、終幕を望んでいる空気に移り変わっていっていた。
次を最後の一撃として、研ぎ澄ますために一度相手と距離を取った。
私のその空気を相手も感じ取ってくれたのだろうか、向こうも居住まいを正してくれていた。
そうして、最後の交錯が始まった。
「追風」で思いっきり加速した私に対して、守護者を名乗る男は微動だにしていなかった。
「舐められているのか、それとも絶対に受け切れるという自信があるのか、どちらなのか私が確かめてあげます。」
数秒後、しっかりと突き刺さった感触を感じた。
「二人ともそこまでにするがよい。」
その声に聴き覚えがあるような気がした。
そこで私が刺していたのは・・・




