幕間5.メイドの追憶②
最後に殺人、暗殺と言った方が適切だろうか。
雑貨屋さんに嘘をついて手に入れた短剣。
もちろんそれを買ったお金は騙し取った路銀とスッたお金。
それほど安いものではなかったが、私がそれからしようとしていたことの対価として得られる金額と比べれば些細なものだった。
この貧民街で生まれた孤児が貴族から暗殺の依頼を受けて、誰かを狙いに行くことも珍しいことではなかった。
もちろん、こんなところに依頼しにくる貴族は後ろめたいところを持った人ばかりなので、向こうが提示した値段よりも少し高い値段が報酬としてもらえた。
この頃になると、当時五歳だった私には何を目的としてお金を稼いでいたのかもわからなくなっていた。
私を子供と思い、手を差し伸べてきた人のいい貴族達の驚いた表情が今も忘れられない。
その大半は世間ではいい貴族ということだった。
もちろんそんなことは幼い私にもわかっていた。
でも、私はそれでどんなに困る人が出ようともやめようとは思わなかった。
私と同じような人間がもっと増えればいいと心のどこかで思っていたからかもしれない。
殺人に愉しさを覚えていたのかもしれない。
そんな私が変わるきっかけになったのは、ある人を暗殺しに行ったときだった。
ある日、私は王都で悪名高い貴族からある人を暗殺して欲しいという依頼を受けた。
そいつは私に対して、暗殺して欲しい理由などを伝えてきた。
そのほとんどが私利私欲のためだったが、私にとっては暗殺ができるかどうかが全てなのでそんなことは関係ない。
いつものように迷子の子供のフリをする。
こんなことは人の多い王都でしか出来ない。
本当に迷子の子供もたくさんいるのだから。
与えられた情報で情報屋に行動パターンを尋ねて、街に降りてくる時を狙って、近寄っていく。
それが私の暗殺のパターンだ。
いつものように必殺の覚悟で暗殺に臨む。




